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羽生結弦がエキシビションの演技に込めた「故郷への思い」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

 羽生の今回の金メダルは、彼にとって決定直後に口にした「ビックリした」というのが本心だろう。何の欲も持たず、挑戦する意識で臨めた最初のショートプログラム(SP)では、2シーズン目になるプログラムという利点を十二分に発揮し、完璧さにさらに磨きをかけた演技を披露して101・45点を獲得。五輪という大舞台で自分の演技を評価されての高得点であり、ライバルのパトリック・チャン(カナダ)には3・9点差をつけた。

 しかし、チャンにとってはまだまだ逆転可能な得点差。フリーではその微妙なリードが羽生にプレッシャーとなってのしかかってきた。

 すぐ後ろにチャンが控える最終組の3番滑走。前に滑ったハビエル・フェルナンデス(スペイン)や髙橋大輔はミスをして、SP9位から171・04点を獲得して暫定トップに立っていたデニス・テン(カザフスタン)を抜けずにいた。羽生もその流れに飲まれたのだろう。最初の4回転サルコウの転倒だけではなく、3回転フリップも転倒するというまさかの展開になった。
 
次のチャンは世界選手権3連覇中の王者。今季のGPシリーズで、羽生は3戦連続で対決し、多くのことを学ばせてもらった存在であり、彼に逆転されることを覚悟したはずだ。だが、その王者もプレッシャーに飲み込まれてジャンプでミスを連発。羽生の手元に金メダルが舞い戻ってきたのだった。

 試合後、「満足していない」と話していた羽生は、実際に金メダルを手にすると、「うれしさが込み上げてきた」と話していたものの、その後は日にちが立つにつれ、悔しさの方が大きくなってきたという。

「僕自身は、もっと強くなりたい。今回の金メダルはあのSPがあったから獲れたもので、フリーは満足できるものではなかった。だからこそ、僕自身をもっと高められるようにしたいです。これからルールも変わると思うけど、その中でもしっかり、五輪のメダリストとして、しっかりと時代をつくれるくらいに頑張っていきたいと思います」

 そう決意する羽生は、練習ではトーループやサルコウ以外の4回転ジャンプや、トリプルアクセル+4回転トーループの連続ジャンプも試みているという。将来的にはフリーで4回転ジャンプ3回も視野に入れているが、まずは今の2種類の4回転を確実にすることが目標になる。

 悔しさを感じるソチの金メダル。それは19歳の青年、羽生結弦のモチベーションをさらに向上させるきっかけとなったようだ。

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