チャンに勝利。羽生結弦の金メダルが見えてきた

  • 辛仁夏●取材・文 text by Synn Yinha 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 ショートプログラム(SP)、フリー、総得点とも自己最高得点を叩き出した日本男子若きエース・羽生結弦(ゆづる)が、3度目のGPファイナルで初優勝を飾った。

自己最高得点でグランプリファイナル初優勝の羽生結弦自己最高得点でグランプリファイナル初優勝の羽生結弦 ソチ五輪を控えたオリンピックシーズンの今季、羽生は、世界選手権を3連覇中の王者パトリック・チャン(カナダ)と実に3度も対戦した(カナダ大会、フランス大会、GPファイナル)。そして今回、"3度目の正直"で強敵チャンを初めて上回る出来を見せて初優勝。GP2大会ではカナダで27.23点差、フランスでは31.68点差と総得点で大差をつけられていたが、このファイナルでは逆に羽生が13.17点差をつける合計293.25点の世界歴代2位の得点を出しての勝利だった。

「このファイナルは勝ち負けよりも自分がどれだけ成長できるかを重視していました。どんな経験ができるかに集中しただけで、勝てたのはたまたま。SPが良かったからフリーでも得点が出た。今大会は今大会、全日本は全日本、ソチ五輪はソチ五輪と、そのときそのときで戦いは違うので、この大会で勝ったからどうなるものでもない」

 本人はいたって冷静だが、ソチ五輪日本代表選考対象の大会でもあるGPファイナル制覇により、羽生が五輪代表に大きく前進したことは間違いない。チャンを破って優勝しただけでなく、今大会ではSPで世界歴代最高得点の99.84点をマークし、フリーでも193.41点を出していずれも自己ベストを大幅に更新。日本男子のファイナル優勝は昨年の髙橋大輔以来ふたり目となる快挙だ。

「今シーズン前はSPで100点を取りたいとか、自己最高を塗り替えたいとすごく思っていましたが、今日は何も考えずに自分のことに集中しようと思っていたし、今できることを一生懸命にやっただけ。得点についてはただ驚きというか、喜びしかない。100点近くをISU(国際スケート連盟)主催大会で出せたことは本当に大きなことでうれしいですけど、これはこれで忘れて、次の試合に気持ちを向けていかないといけない。今日のSPは(細かな部分を)何も覚えていないほど、やるべきことをやったという感覚しか残っていないです」

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