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中谷潤人が振り返る「少し力みがあった」西田凌佑戦 井上尚弥超えへ「異常なことをやっていかないと到達できない」 (2ページ目)

  • 林壮一●取材・文 text by Soichi Hayashi Sr.

【感情をコントロールしながら「削っていった」】

 バンタムに上げてからの中谷は、「体が勝手に動く」体験をしつつ、KO勝ちを重ねてきた。しかし、今回の統一戦において、それはなかった。すべてセコンドの声を聞き、かつ自身の頭で考え、狙いを定めた。

 6月8日の有明コロシアムは、中谷戦を想定して策を練りに練った西田が己を出しきった試合でもある。米スポーツ総合局『ESPN』も生中継したが、オンエア中、実況席では「ニシダとナカタニではパンチ力が違う」「ノックアウトは時間の問題」なる言葉が飛んでいる。それでも、劣勢に立たされた西田がポイントを奪ったラウンドも存在した。

試合前の中谷(左)と西田 photo by Soichi Hayashi Sr.試合前の中谷(左)と西田 photo by Soichi Hayashi Sr.この記事に関連する写真を見る

 この日の会場にはWBA、WBOの同級王者である堤聖也(角海老宝石 ※休養王者)、武居由樹(大橋)もゲスト出演のため姿を現していた。西田は中谷の壁を越えられなかったが、他の2名の王者になら白星を挙げる可能性は十分にある――。そんな期待を抱かせる内容ではなかったか。少なくとも西田は、自身の価値を下げる戦いはしなかった。「最強の男と拳を交えたい」と中谷戦を望んだ西田はハートを見せたのだ。

「3、4ラウンドを終えてからは、流れを変えるというより、『ボディを打っていけ』というセコンドの声を聞いて淡々とやりましたね。リズムをつかめるようになると同時に、西田選手のダメージが感じられたので、『そこまで試合は長引かないな』と感じていました」

 5ラウンドの途中から、西田の右目の腫れが目立つようになる。場内アナウンスでは、「偶然のバッティングによるもの」と説明されたが、筆者には中谷のパンチによるものと感じられた。

「そういう判断が下ったのなら、バッティングだったんじゃないですかね。多少、頭が当たったところがありましたし。その後、こちらが目に当てたパンチもありました。西田選手の目が腫れる前の3ラウンドくらいでしたか、右肩を痛めていることがなんとなくわかりました。ですから、『そこを狙おう』と考えました。

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