検索

山中慎介が分析する、判定が議論になった那須川天心の試合 ターゲットとなる王者・堤聖也と比嘉大吾の激闘も語った

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

山中慎介インタビュー 後編

(中編:中谷潤人は井上尚弥と戦う前に統一戦へ 山中慎介が他のバンタム級日本人王者のなかで「一番の強敵」に挙げたのは?>>)

 2月24日、WBOアジアパシフィック・バンタム級王者の那須川天心(帝拳) が、前WBO世界バンタム級王者のジェイソン・モロニー(オーストラリア) を相手に3-0(97-93、97-93、98-92)の判定勝利を収めた。試合後、判定を巡って議論も巻き起こったが、元WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏はどう見たのか。

 さらに同日のWBA世界バンタム級タイトルマッチ、堤聖也 vs. 比嘉大吾は9ラウンドにダウンの応酬もあるなど激闘に。結果は引き分けとなったが、バンタム級戦線の"群雄割拠"を象徴する一戦についても山中氏に聞いた。

判定勝利でモロニ―(左)を下した那須川  photo by Yanagawa Go!/ヤナガワゴーッ!判定勝利でモロニ―(左)を下した那須川  photo by Yanagawa Go!/ヤナガワゴーッ!この記事に関連する写真を見る

【判定が議論になるほど拮抗した試合になった理由】

――天心選手とモロニー選手の試合は拮抗していたようにも見え、3-0での判定勝利という結果について議論が起きましたが、山中さんはどう見ましたか?

「ラウンドごとの有効打を見れば天心のほうが多かったと思います。ただ、パンチをもらって効いた場面があったり、モロニーが明確に取ったラウンドもありました。ヒヤッとするような危ない場面が印象に残った分、採点に納得がいかないと感じる人がいるのも理解できます」

――ラウンドマストシステム(各ラウンドで優劣を付ける方式)だと、1ラウンドごとの差はわずかでも、結果的に得点差が開くことがありますね。

「そうですね。最終的に合計すると大きな差になって、『そこまで差があったか?』と議論が起きることはよくあります。天心は6ラウンドにはあわやダウンというシーンもありましたし、その印象が強かったことが、採点に対する議論につながったと思います」

――1ラウンド、天心選手はモロニー選手の右ストレートをもらって動きが止まりました。試合の入り方はいかがでしたか?

「試合開始直後から、モロニーとの距離が近いように思えました。モロニーは序盤から前に出て、右を打てば届く距離で戦おうとしていましたよね」

――モロニー選手は、前戦の武居由樹選手(WBO世界バンタム級王者)との試合では、距離を詰めることができずに判定で敗れました。今回は積極的に前に出ましたね。

「武居戦の反省を生かして、サウスポー対策をより徹底してきたんでしょう。それから、天心のパンチを実際に受けて『怖さはない』と見て前に出た可能性があります。元世界王者ですから、そのあたりの対応はうまいですね」

1 / 4

著者プロフィール

  • 篠﨑貴浩

    篠﨑貴浩 (しのざき・たかひろ)

    フリーライター。栃木県出身。大学卒業後、放送作家としてテレビ・ラジオの制作に携わる。『山本"KID"徳郁 HEART HIT RADIO』(ニッポン放送)『FIGHTING RADIO RIZIN!!』(NACK5)ウェブでは格闘技を中心に執筆中。レフェリーライセンス取得。ボクシング世界王者のYouTube制作も。

【写真】女優・ラウンドガール・格闘家の「三刀流」 宮原華音フォトギャラリー

キーワード

このページのトップに戻る