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中谷潤人は「成長が加速している」元ヘビー級王者が語るセンスの高さと、井上尚弥との夢の一戦 (4ページ目)

  • 林壮一●取材・文 text by Soichi Hayashi Sr.

【井上尚弥とは「戦うことになるさ」】

 そして、迎えた第3ラウンド。中谷はストレートをぶち込む距離を計りながら、リングを支配する。クエジャールが接近戦に活路を見出そうとしても、挑戦者のパンチをブロックした。

「ジュントはわかっていたんだよ。ノックアウトで終わらせる術を。2年近くジュントのファイトを見てきたが、成長が加速している。どんどんシャープになっている。結果的に1、2ラウンドはジュントにとって、ウォーミングアップだったんだろうな」

 同ラウンド2分28秒、中谷は左ボディアッパー、右ボディアッパーをヒットし、クエジャールの動きを止める。間髪を入れずに、ジャブからボディへの左ストレート、顔面へのワンツーで挑戦者を沈めた。「プロデビュー以来、ダウン経験ゼロ」が売りのクエジャールだったが、もはや成す術がなかった。虚な目をして起き上がったが、さらに中谷の左フックを浴び、腰からキャンバスに崩れ落ちた。

「見事な仕留め方だ。速いよ。ジュントは、この爆発力をどこで出すか組み立てていたんだ。顔面、ボディと打ち分けているところにセンスを感じる。

 世界チャンピオンにも、いろんなレベルがある。ごく一部の人間がアーティストの域に達する。モハメド・アリ、マイク・タイソン、マービン・ハグラーなんかがそうだ。残念ながら俺はそこまではいけなかった......。でも、ジュントは到達している。ナオヤ・イノウエもだ。まぁ、ひとつしか変わらない階級で2人のジャパニーズが連戦連勝しながら複数階級を制しているんだから、戦うことになるさ。

 両者がぶつかった時、明暗を分けるのはディフェンス力だ。先にクリーンヒットしたほうが勝つと俺は見る。KO決着になるんじゃないか。アメリカのボクシングファンも胸を踊らせるメガ・ファイトだ。俺もワクワクするよ」

 WBCバンタム級王者の今年の目標は「ケガなく、理想高く突き進む!」。モンスターを猛追しながら、中谷潤人の挑戦は続く。

著者プロフィール

  • 林壮一

    林壮一 (はやし・そういち)

    1969年生まれ。ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するもケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。ネバダ州立大学リノ校、東京大学大学院情報学環教育部にてジャーナリズムを学ぶ。アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(以上、光文社電子書籍)、『神様のリング』『進め! サムライブルー 世の中への扉』『ほめて伸ばすコーチング』(以上、講談社)などがある。

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