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中谷潤人は「成長が加速している」元ヘビー級王者が語るセンスの高さと、井上尚弥との夢の一戦 (3ページ目)

  • 林壮一●取材・文 text by Soichi Hayashi Sr.

 1984年にWBC、1986年にWBAヘビー級王座に就いたウィザスプーンは、44歳にしてIBF9位にランクされた男である。現役選手としての最盛期にプロモーターのドン・キングによるピンハネに泣いたウィザスプーンは、競技に集中出来なかった。メディアに発表されたファイトマネーの9割を搾取されたこともある。

 キングを相手取り、法廷闘争を仕掛けた際には、空の薬莢と共に脅迫状を送りつけられる経験までしている。結局、当時の日本円で1億ほどの和解金を得るが、すべてを蕩尽(とうじん)し、再びリングに戻った。ボクシングでしか、金の作り方を知らなかったからだ。そして45歳まで現役を続けた。

中谷について語ったティム・ウィザスプーン photo by Soichi Hayashi Sr.中谷について語ったティム・ウィザスプーン photo by Soichi Hayashi Sr.この記事に関連する写真を見る

"男手ひとつ"で4人の子どもを世話していたウィザスプーンは、晩年、ろくに練習もせずに試合に出場した。それでも世界十傑に名を連ねられたのは、"打たせない技術"を身につけていたからだ。だからこそ、どんなファイターに対してもディフェンスの重要性を説く。

「今回のジュントは、流石に世界タイトルの防衛戦だからガードを下げるようなことはしなかった。終始、彼の距離で戦っていたね。3ラウンドに入るとチャンピオンは前に出た。クエジャールのダメージを見て、『このラウンドで仕留める!』と決めてギアを上げたんだろう。ノックアウトに結びつく"この時"を作りにいったんだ。1、2ラウンドやってみて、クエジャールにはストレートが効くと感じ、ますます自信を深めたんだろう。

 接近戦でのジュントは肘を折ったり、両方の肩を大きく内側に動かして挑戦者のパンチを殺しているね。非常にうまい。まぁ、この相手なら、ジュントがその気になればファーストラウンドで試合を終わらせることも可能だったと俺は思う」

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