中谷潤人は「成長が加速している」元ヘビー級王者が語るセンスの高さと、井上尚弥との夢の一戦 (2ページ目)
「2ラウンドに入ると実力に加え、世界タイトル9戦目と1戦目という隔たりが顕著になった。ジュントはストレートを顔面にだけじゃなく、胸、腹、と見舞うようになった。攻撃のバリエーションが増した。
挑戦者は怯えてしまって、動きが単調になったね。戦いようがなかったんだな。コーナーにいたセコンド陣が、いったい、どういうメニューで準備させたのか疑問に思ったよ。ポジショニングが悪く、ジュントが打ちやすいスタンスしか取れなかった。もっとリングを回るとか、ダッキングしながら距離を詰めるとか、考えなかったのかな......。
ジュントは目がいい。チャレンジャーを物すごく冷静に観察していた。無敗の挑戦者といっても、すぐに『ディフェンスが穴だらけだ』と気づいたはずだ」
ウィザスプーンは、挑戦者に同情するように言葉を続けた。
「クエジャールがジュントに挑むのは、早過ぎたよ。あと3、4戦して、世界タイトルマッチに絡めるレベルになってからリングに上がるべきだった。何も出来なかったな。メキシコから敵地である日本に行き、これだけ強いチャンピオンと拳を交えるんだぜ。並の挑戦者じゃ太刀打ちできっこない。仕方ないさ。
ボクサーっていうのは、正しい練習を積み重ねた者だけが成功する。クエジャール陣営に確かな知識を持っている人間がいるとは、とても思えない。ボクシングの完成度が実に低い。ジュントの左ストレートの餌食になるのを、黙って見ていただけさ」
【自らの経験を踏まえて説くディフェンスの大切さ】
ウィザスプーンは、クエジャール戦に向けて中谷がこなした211ラウンドのスパーリングのうち、1月27日にLAで行った8ラウンドの映像を目にしている。試合前、以下のように話していた。
「時折、ジュントがガードを下げてパートナーを誘うシーンがある。これは、あくまでもスパーリングだからやっているんだろう。本番では、ガードを上げなきゃダメだ。試合だろうが練習中だろうがディフェンスを疎かにしてはいけない。絶対にだ」
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