井上尚弥の次戦の相手、グッドマンとはどんなボクサーか? 対戦経験ある前日本バンタム級王者は「距離の遠さ」を実感 (3ページ目)
敵地でしたから、倒してやろうと左ストレートを打ち続けましたが、ダウンを取ったラウンド以外は全部、向こうのポイントでしたね。各回、ちょっとずつ負けていたのかなと思います。本当に技術の高い選手でした。僕はガムシャラに攻めましたが、グッドマンは余裕があったんじゃないかな」
ジャッジ3名が7ポイント差と採点し、日本人チャレンジャーは敗れた。
【井上vsグッドマンはどんな試合になる?】
そのグッドマンが井上尚弥に挑む一戦について、富施は語る。
「井上尚弥選手との試合は、ファーストラウンドが楽しみです。グッドマンは、左手でリズムをとりながら好戦的にプレッシャーをかけますね。井上選手はなんでもできますが、プレッシャーのかけ合い、そこでどちらが主導権を握るか見たいです。いずれはグッドマンが倒されるでしょうが、初回の駆け引きが楽しみですね。流れに注目しています。
5月の井上(右)vsネリ終了後、リングに上がったグッドマン(左)photo by Hiroaki Finito Yamaguchiこの記事に関連する写真を見る
対戦した人間からすると、挑戦者にもちょっとは頑張ってほしいです。でも、井上選手って異次元のチャンピオンじゃないですか。グッドマンは僕でも渡り合えた選手ですが、井上選手は世界チャンピオンのなかでもナンバーワンというスーパーな存在です。ほかの王者が相手だったら、グッドマンも世界王者になれた可能性があると思うんですよ。でも、井上選手に勝つことは難しいでしょう。本当に、規格外ですから。
1ラウンド目は距離の取り合いをして、徐々にリードの差し合いで井上選手がアドバンテージを取り、グッドマンがディフェンシブになっていく。挑戦者はどんどん削られていって、早ければ3回、遅くとも5ラウンド以内に井上選手がKO勝ちすると見ています。井上選手のボディブローが有効に決まって、挑戦者がダメージを蓄積してしまうんじゃないですかね。
グッドマンは『想定したよりも距離が遠かった』というのが僕の実感です。それをいかに潰すか、井上選手の戦いぶりが楽しみです。僕はけっこう、グッドマンのパンチをもらってしまいましたが、距離の取り合いでも井上選手が勝つのか、それともプレッシャーをかけていくのか、そのあたりのリングの使い方に注視します。距離も井上選手がコントロールしたら、グッドマンは戦いようがないですよ」
いずれにしても、井上尚弥の圧勝は間違いないとしながら、富施は言葉を続けた。
「グッドマンはデビュー以来19連勝中ですが、全勝できるだけの力を持った、テクニシャンです。相手に当てさせず、自分が当てるスタイルで、まとめ方も器用です。パンチ力よりも、連打で相手をストップするタイプと呼べるでしょう。
でも、井上選手はレベルが違います。第一に、踏み込みのスピードがほかの選手と比較にならないくらい速い。1度パンチをヒットしてから、もう一回踏み込む。ステップインの連続が頭抜けています。1発だけだと、距離を取るのがうまいグッドマンは対応できるかもしれません。でも、連動した踏み込み、連打というのは味わったことがないでしょう。
井上選手はまったく違う次元、土俵で戦っている人なので、僕なんかが語っていい存在じゃないですけれどね......。ボクサーはもちろん、ファンのみなさんも憧れていますよ。野球なら、大谷翔平選手のような唯一無二の男でしょう」
グッドマン戦を糧とし、今年4月に日本バンタム級王座に就いた富施だが、同7月の初防衛戦でタイトルを手放している。来たる12月20日、自身も復帰戦を迎える。
「次に勝って、日本かOPBF東洋太平洋かWBOアジアのタイトルに絡んでいきたいです。もう一回、ベルトを獲りたいですね」
富施が何度も「異次元」と口にした、28戦全勝25KOの"モンスター"は2025年1月24日、どんな内容で白星を加えるか。
著者プロフィール
林壮一 (はやし・そういち)
1969年生まれ。ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するもケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。ネバダ州立大学リノ校、東京大学大学院情報学環教育部にてジャーナリズムを学ぶ。アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(以上、光文社電子書籍)、『神様のリング』『進め! サムライブルー 世の中への扉』『ほめて伸ばすコーチング』(以上、講談社)などがある。
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