ケンコバが振り返る越中詩郎の「禁断の試合」 ザ・コブラのための大会で目撃したある異変 (4ページ目)

  • 松岡健治●取材・文 text by Matsuoka Kenji

――おっしゃるとおり、全身バネのような打点の高さは驚異でした。

「そのコブラが、越中さんとの試合で開始早々にドロップキック放つんですけど、これがプロレス史のなかでもトップクラスのドロップキックなんです。越中さんは顎の下を突き刺され、大の字で倒れるという洗礼を浴びました」

【盛り上がりに欠ける展開で越中に異変】

――映像を見ましたが、確かにすさまじいドロップキックですね。

「あまりのえげつなさに、大歓声が起きましたからね。ただ、これがコブラがコブラたる所以なのかもしれませんが、肝心のコブラ本人が観客の熱狂を感じ取れていないんです(笑)。その後も多彩な技で越中さんを追い詰めるんですけど、お客さんがまったく乗ってこないんですよ」

――まさにザ・コブラの世界ですね(苦笑)。

「コブラの大技ラッシュにも沸かないリング。しかも実況の古舘伊知郎さんが、越中さんを『戦うサラリーマン』と形容するんです。確かにツルっとした顔をしているし、髪型も新日本の選手のように襟足を伸ばしているわけではなく、かといって刈り上げもしないふんわりパーマ。試合は常に激闘なんですが、古舘さんにそう実況されるのも致し方なかったと思います。そうして会場も放送席も、新日本のストロングスタイルとはかけ離れた展開に陥ったんです」

――巻き返すのは大変そうですね......。

「そんな状況のなか、越中さんが技を受けるときに足をバタバタし始めたんです。これは余談になりますが、越中さんは身長185cmで、日本人レスラーのなかでも高身長なのに小さく見られがちなんですけど、それはあのバタバタが原因だと思うんですよ。どっしりしてないから大きく見えないんですけど、実際に会場で見るとデカさを感じるんです」

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