中谷潤人vs井上尚弥は伝説の一戦を想起させる「超一流の戦い」アメリカの名トレーナーが語る夢のカード (4ページ目)

  • 林壮一●取材・文・撮影 text & photo by Soichi Hayashi Sr.

 ロブレスの祖国、メキシコには、かつてマルコ・アントニオ・バレラとエリック・モラレスというライバルがいた。彼らはスーパーバンタム、フェザー、スーパーフェザーと3階級にわたって世界タイトルを懸けて戦った。今日、アメリカやメキシコには、いずれ訪れるであろう井上尚弥と中谷の対戦を、バレラvs.モラレスと比較するボクシングメディアもある。

 が、ロブレスはこれを否定した。

「バレラvs.モラレス戦は、精神面での充実度は称えられるが、そんなにハイレベルな試合じゃなかった。イノウエとジュントは、よりクオリティが高い。それよりも、ジョニー・タピアvsポーリー・アヤラ第1戦のような激闘になる予感がある」

 ロブレスの発言を耳にした筆者の体は火照った。タピアvsアヤラ――。1999年6月26日にラスベガスで開催されたWBAバンタム級タイトルマッチである。

 オープニングベルから試合終了まで、まったくペースを落とさずに超絶な攻防を見せた同ファイトは、『リング』誌が選ぶ同年の年間最高試合に選ばれている。ジャッジ2名が116-113、残るひとりが115-114と採点してアヤラがタピアからタイトルを奪ったが、勝者も敗者もすべてを出し尽くした、まさに死闘だった。四半世紀がすぎた今なお、筆者はリングサイドの記者席から同ファイトを見られた幸運に感謝している。

「残念ながら45歳で夭折したが、タピアはテクニックもハートもピカイチの、伝説的ファイターだった。そのタピアと真っ向から勝負したアヤラも秀逸だったね。人種や国籍など関係ない。あのふたりは、ただただ、ボクサーとしてリングで輝いた。

 ジュントとイノウエも、同様のレベルにいる。どんな作戦を立てて準備するか。現段階では判定までもつれるような気がするが、今後の成長次第で何が起こるかわからない。とにかく、これ以上のボクシングマッチは見られない、という勝負になるだろう」

 井上尚弥も中谷潤人も、来るべきその日に備え、勝ち続けねばならない。世界中が注目するメガ・ファイトとなりそうだ。

【写真】中谷潤人 LAキャンプ密着フォトギャラリー

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