「この人じゃなきゃダメだ」東京女子プロレス遠藤有栖が「バディ」鈴芽との絆で手にしたタッグの頂点 (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

【両国国技館のセミファイナル「最後は2人の絆」】

 今年2月10日、後楽園ホールで開催された「第4回"ふたりはプリンセス"Max Heart トーナメント」決勝戦にて「白昼夢(辰巳リカ&渡辺未詩)」を破り、でじもんは悲願の初優勝を果たした。全11チームの頂点に立ち、プリンセスタッグ王者の「ユキニキ(水波綾&愛野ユキ)」に挑戦表明した。

 3月31日、両国国技館大会のセミファイナルで、プリンセスタッグ選手権試合が行なわれた。2年前の両国国技館大会では、でじもんは第1試合に出場。2年かけてここまで辿り着いた2人を、観客は万感の思いで見守った。

 ゴングが鳴る。有栖が愛野にドロップキックで先制攻撃するも、愛野はいとも簡単に弾き返してみせる。

「一瞬、『えっ?』と混乱しました。私たちも燃えていたけど、王者の圧がすごかった。パワーもすごいし、『私たちはスタミナと速さで闘うしかない』と思いました」

 でじもんは息の合った連携技で、徐々にユキニキを翻弄していく。ユキニキはそれをパワーで強引に跳ね返す。息つく間もない攻防が続く。

 練習生だった頃、有栖の背中にはいつもロープの痣があった。しかし、今の彼女は違う。高速のロープワークでリングを縦横無尽に動き回り、水波を追い詰めていく。

 水波は試合前、「でじもんの動きは脅威」と話していた。"でじもんの動き"とは――「グルグルしてる。どこからでも飛んでいける」と有栖は言う。

 有栖と鈴芽がタッグを組んで、3年が経つ。勝てない日々が続いた。2人で苦い思いを味わってきた。どうしても勝ちたい。しかし、それはユキニキとて同じ。ユキニキの連携技を食らい、倒れ込む鈴芽。ここは有栖が頑張らなければいけない。渾身の磐梯山――。有栖の感情が爆発した。

「今までずっと悔しい気持ちが大きかった。でも今は、それ以上に喜びとか楽しさとか、この人には負けたくないという気持ちとか、いろんな感情があります」

 有栖に呼応するように、鈴芽の感情も爆発した。スタミナは限界。しかし愛野を睨みつけ、「来いよ!」と声を張り上げる。負けたくない。パワーでも。

 鈴芽が仕掛ける。水波が返す。愛野が仕掛ける。有栖が返す。最後は一瞬の隙だった。鈴芽のリング・ア・ベルが、愛野をマットに沈めた。1、2、3。

「やっぱり最後は2人の絆だったのかなと思います。長いこと組んできて、ようやく成果が出たと思う」

 ベルトを手にした2人は泣きじゃくり、そして笑顔で抱き合った。

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