「この人じゃなきゃダメだ」東京女子プロレス遠藤有栖が「バディ」鈴芽との絆で手にしたタッグの頂点 (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●取材・文 text by Ozaki Mugiko

【鈴芽と二度目のシングルマッチ「この人じゃなきゃダメだ」】

 2022年5月3日の後楽園ホール大会、才木玲佳の引退セレモニー前のエキシビジョンマッチで、有栖は才木の最後の対戦相手に選ばれた。3分間、最後とは思えぬ激しい試合をしたあと、才木はマイクでこう言った。「私が知ってる遠藤有栖ではなくて、もう立派なプロレスラーの遠藤有栖でした」――。才木の試合映像を見て、その闘う姿に憧れてプロレスラーになった有栖は、涙が止まらなかった。

「正直、引退と言われてから才木さんとは試合できないと思っていたので、なおさらその言葉が響きました。『プロレス人生、マジで楽しもう』と思いましたね。体が動かなくなるまでプロレスをやろうと決めました」

 7月22日に会津若松市観光大使に就任し、10月21日には、会津若松市で夢だった凱旋興行を開催。超満員札止めだった。

 有栖は会津を心から愛している。「鶴ヶ城」「磐梯山」「什の掟」など会津にちなんだ技を使い、コスチュームの法被(はっぴ)は新選組をモチーフにしている。背中には新選組と同じ「誠」の文字。「誠っていいですよね」と満面の笑みを浮かべる。

「会津は本当にいいところなので、ずっと『もっと魅力を伝えたい』と思っています。観光大使という肩書をもらった時、『会津を広めてやる!』と決めました」

 2023年2月11日の後楽園ホール大会で、宮本もかと対戦。デビューから2年が経っていたが、まだシングルでは一度も勝てたことがない。有栖は感情がストレートに表出するタイプだが、この試合はまさに真骨頂。「どうしても勝ちたい」という気持ちがひとつひとつの動き、体中から溢れ出ていた。有栖はキャメルクラッチで宮本を下し、ついにシングルで初勝利を手にした。

「勝てなかったことにあんなに悩んでいたけど、努力が報われたと思いました。頑張るって大事なことなんだって......。急に自信がつきました。『自分ひとりでもやれるぞ!』とようやく思えた」

 3月18日、有明コロシアムにて鈴芽と二度目のシングルマッチを行なう。スタミナ配分など関係なし。技を返されてもすかさず攻める。一瞬一瞬にすべてを賭けた。結果は負けてしまったが、「遠藤有栖はここまで来たのか」と誰もが思った試合だった。

「負けたのはもちろん悔しかったけど、本当に楽しかった。鈴芽さんともっと闘いたいし、ずっと組んでいたい。あらためて『この人じゃなきゃダメだ』と思いました。絆が一気に深まった気がします」

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