山中慎介が語る井上尚弥の圧倒的な勝利「僕とネリとの因縁も終わった」
山中慎介インタビュー 前編
井上尚弥が挑戦者ルイス・ネリを6回TKOで下した東京ドームでのビッグファイトから約1カ月。いまだファンの熱狂と興奮は冷めやらないが、この歴史的瞬間を解説席から見届けた元WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏に、ネリへの思い、井上の今後について聞いた。
ネリ(左)を6回TKOで下した井上 photo by 山口フィニート裕朗/アフロこの記事に関連する写真を見る
【試合前にネリが山中に送ってきた視線】
――試合が終わったあと、山中さんのネリに対する感情に変化はありましたか?
「そうですね......ゴングが鳴る前までは、リング上のネリをあまり見ないようにしていました。でも、ゴングが鳴ってしまえば"ひとつの試合"として見ることができましたね。もともと、ネリには憎しみの感情もなかったですし、"敵討ち"という目線もなかったですが、この試合が終わったことで僕とネリとの因縁も終わった感じでしょうか。今後、ネリについて聞かれることもなくなるでしょうからね」
――試合開始前、リング上からネリが山中さんに視線を送ってきたそうですね?
「たまたま、リング下にいる僕を見つけたようで目が合ったんです。こちらを見て、何かを訴えていたのか......意図はわかりませんでしたが、なんとなく『やってやるぞ』という感じで、テンションがマックスになっている目をしていました。
ネリにとって日本での試合は3度目で、今回はパウンド・フォー・パウンド(PFP)の上位にいる尚弥が相手。舞台は東京ドームですし、期するものがあったんだと思います。僕とネリが目を合わせたことは、隣にいた実況アナウンサーしか気づいていませんでした」
――目を合わせていた時間はどれくらいですか?
「僕から目を逸らしたので、一瞬です。もう因縁めいた感じを出すこともないだろうと(笑)」
――今回の試合で、山中さんのネリに対する印象が変わったとも聞きます。
「それだけ、すばらしいファイトでしたから。実力差は大きかったですが、尚弥の過去の対戦相手と比べて、勇敢に攻める姿勢が見えた。ネリは日本でマイナスのイメージが強い選手ですが、今回はきっちり仕上げてきましたしね。まぁ、選手としては普通のことなんですけど、過去が過去だけにポイントは上がりますよ(笑)。昔、めちゃくちゃ悪かった人が、真面目に頑張っていると褒められる。それと同じですね」
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