東京女子プロレス・角田奈穂が振り返る、保育士と女優時代の苦悩 「崖っぷち」の状態でリングに賭けた (4ページ目)
【殺陣のレッスンきっかけで、地下アイドル。そして舞台女優へ】
パチンコ屋のコーヒーレディーのアルバイトをしながら、気晴らしに習い事をしようと考えた。「これまでやってこなかったことがしたい」と思い、選んだのが殺陣だった。時代劇や大衆演劇をやっていた先生に教わり、レッスンに来る人たちは年齢も性別も職種もさまざま。ヒーローに憧れている男の子もいた。やっていることも、聞くことも、すべてが新鮮で楽しかった。
レッスンがある神楽坂のスタジオで、土日に地下アイドルのライブが行なわれていた。角田は主催者に声を掛けられ、興味本位で地下アイドル活動を始める。30人ほどの客の前で、ソロでカバー曲を歌った。
ファンがつくようになり、撮影会をするようになった。「せっかくやるんだったらちゃんと芸能の仕事をしたい」と思い、タレント事務所に所属。グラビアの仕事をしながら舞台のオーディションを受け、2008年に女優デビューする。
「舞台って"数字社会"なんですよ。『お客さんをどれだけ呼べるか』なので、その頃はチケットも20枚とか30枚のノルマがありました。ノルマを達成できないと、お金を払って舞台に出る形になる。もちろん1カ月稽古をして舞台本番をやっても、プラスになるお金なんて1円もないし、舞台期間中、収入がゼロでもやれるだけの蓄えを作って舞台をやる感じでしたね」
どんなに芝居が下手でも当時、主演を張れるのはファンがついている元アイドル。仕事でやっているはずなのに仕事にならないことに悩み、2014年6月に引退を発表。裏方に回ることを決意する。制作会社に就職し、キャスティングや制作の仕事をした。しかし、自分が舞台上にいないことがもどかしくてたまらなかった。
そんな時、制作会社の社長がアクトレスガールズを立ち上げることになる。「女優によるプロレス」がコンセプトの団体。角田は一期生として声をかけられた。
「表舞台に戻りたかったけど、当時はもう28歳でアイドルをやれる年齢でもないし、最後のチャンスだと思いました。崖っぷちで飛び込みましたね。『プロレスはやるけど、ほかのプロレス団体とは違う。女優がやるプロレスだから危ないことはしない。顔への攻撃もない』と聞いて入りました」
しかし、実際に始めてみれば、そんなに甘くはないと気づくのに時間はかからなかった。運動経験のない角田にとって、試練の日々が始まった――。
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【プロフィール】
●角田奈穂(かくた・なお)
1987年3月20日、千葉県東金市生まれ。専門学校卒業後、公務員保育士になるも、職場でいじめに遭い、2カ月で退職。趣味で始めた殺陣がきっかけで、地下アイドル活動を始める。グラビアアイドルを経て、2008年、舞台女優デビュー。2015年、アクトレスガールズプレ旗揚げ戦にて、プロレスデビューを果たす(対本間多恵戦)。2020年10月5日、アクトレスガールズを退団し、11月14日より東京女子プロレスにレギュラー参戦。2022年1月、乃蒼ヒカリとタッグチーム「ふりーWiFi」を組み、2023年10月9日、たま未来メッセ大会にて開催されるプリンセスタッグ王座決定戦に臨む。161cm。X(旧Twitter):@kakuta_nao
■大会情報
【大会名】WRESTLE PRINCESS IV
【日時】2023年10月9日(月) 開場13:00 開始14:00
【会場】東京・東京たま未来メッセ(八王子市)
【写真】東京女子プロレス「無冠の女王」角田奈穂 フォトギャラリー
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