東京女子プロレス・角田奈穂が振り返る、保育士と女優時代の苦悩 「崖っぷち」の状態でリングに賭けた (3ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko
  • photo by 林ユバ

【保育士になるも、配属初日からいじめに遭う】

 卒業後は保育士になるという目標ができた。保育士には、私立の保育園か公立の保育園か、選択肢が2つある。公立の園で働くには、公務員試験に合格する必要がある。どうせなら母親と同じ公務員保育士になりたいと思った。

 見事、一発で公務員試験に合格。配属初日、配属先の保育園に着くと、先生たちが出迎えてくれた。「よろしくお願いします」と言うと、ある先生にこう言われた。「新人の扱い方とか、忘れてるから」――。

「ショックでした。一生、その人の顔も言葉も忘れません」

 保育園は欠員が出ない限り、新人が入らない。角田が配属された園も、何年も新人が配属されず、20代の先生がひとりもいなかった。男性の学年主任に仕事を教わっていると、「いいよね、ちょっと若いくらいでチヤホヤされて」と嫌味を言われた。女性の先輩に仕事のやり方を聞いても、「学年主任の先生に聞けば?」と言われ、教えてもらえない。

 唯一気に掛けてくれた人も、その園でいじめに遭っていた。休みの日にお茶をして話を聞いてもらったが、「園の中で私と喋るとあなたもいじめられるから、園では私に話しかけないほうがいいよ」と言われた。

 配属から1カ月が経った頃、頭痛が止まらなくなり、病院に行くと肺炎になりかけていた。ストレスが呼吸器官に出ていると言われた。「どうしても仕事を休むと言えないんだったら、入院を言い訳にしなさい」と入院を勧められた。保育園に電話を掛けて事情を説明すると、電話口で「なんか新人ダメらしいよ」という声が聞こえてきた。休んでも悪口を言われているというストレスで、体調は悪くなる一方だった。

「0歳児クラスの担任だったんですけど、夜に寝ようとして目を瞑ったら赤ちゃんの泣き声がするようで寝られない。休んだらまた何か言われると思うと、外でカゼの菌をもらうのが怖くて、休日も家から一歩も出られなくなりました」

 精神的に追い込まれ、配属から2カ月で退職した。

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