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「プロレスは男の詩」全日本プロレスの実況アナが天龍源一郎に重ねた「反骨」の心 ハンセン失神事件の秘話も明かした (2ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by 東京スポーツ/アフロ

【自らの不遇への思いも乗せた名実況】

 そこには若林アナ自身の思いも込められていた。この東京ドーム大会で若林アナは、天龍vsサベージを含め、メインイベントのホーガンvsハンセンなど、主要カードの実況を担当するはずだった。

 ところが直前になり、この年の3月限りで「全日本プロレス中継」の実況を勇退した倉持隆夫アナが、ドーム大会の1日だけ復帰することが決定。ホーガンvsハンセンの実況を務めることになったのだ。

「倉さん(倉持アナ)は3月で勇退したはずなのに、ドーム大会ということで復帰してメインの実況を"持っていかれた"んです。『私は常にサブか』と思いました。その自分自身の反骨を、天龍選手に重ねたんです」

 そして生まれたのが、天龍の入場時の言葉だった。

「プロレスは男の詩(うた)だ。心の詩だ。裸の詩だ。励ましの詩だ。生きる詩だ。そして天龍の詩だ!」

 プロレスと天龍への賛歌とも言える熱い実況。この言葉が流れた直後、天龍がジャンパーを脱ぎ捨ててリング上のサベージへ投げつけ、試合は一気にヒートアップした。若林アナはこの実況を、次のように振り返る。

「言葉としては『詩』をキーワードに、いろんな単語を乗っけただけなんです。ただ、その根底にあったのはやはり反骨でした。常にジャンボ鶴田選手の背中を追いかけ、その高い壁を越えようとした天龍選手の反骨。その生き様を表現しようと、私なりに考えた言葉があの実況になりました」

 若林アナは1984年5月から「全日本プロレス中継」を担当して以降、天龍の生き様に心酔していた。特に、1985年1月に新日本プロレスを離脱した長州力が全日本のマットに参戦した時、真正面から長州と勝負した天龍のファイトに心を奪われた。

「天龍vs長州戦は好きでした。何が起きるかわからない。常にピリピリ、ハラハラした緊迫感がありました。あのドキドキ感は、それまでの全日本にはなかった風景でした」

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