「キック界のカリスマ」立嶋篤史は、51歳の今もリングに立つ 100戦目はTKO負けも「この表現方法を続けていきたい」 (3ページ目)
この日、何度も"立嶋コール"が響いた。フラフラになっても踏ん張れたのは、それがあったからだ。
「お客さんの声が聞こえなかったことはありません。僕はお客さんの立嶋コールがあったから頑張ってこれた。練習で苦しい時、減量で苦しい時、走っていて苦しい時、いつも『タテシマ~、タテシマ~』という声が聞こえてきました。みんなの声が僕の鼓膜にこびりついています。僕はずっと励まされてきました」
だからこそ、ファンに自分らしい戦いを見せたかった。
「今日はみんなに、『立嶋の試合を見にきてよかったな』と思わせてあげることができなかったことが悔しいです」
2008年に出版された書籍『ざまぁみろ!』(立嶋篤史、幻冬舎アウトロー文庫)の中で立嶋はこう書いている。
「負けたくらいで気持ちは萎えない。また、頑張ればいい。悔しかったら、もっと頑張ればいい。それが嫌ならやめればいい」
その姿勢が100戦目を迎える原動力になった。
「僕は自分を納得させるためにやっているだけで、最後は静かに消えていけばいいと思っています。ただ、最近は少し(メディアなどで)注目されていて、それはそれでうれしい」
立嶋のコメントを聞きながら、30年前の言葉を思い出した。
「つまらない相手に派手な勝ち方をするのが得で、勝てるかどうかわからない相手と戦ってぶっ飛ばされることを損だとするならば、僕は損を選びますよ」
これまで「肉を斬らせて骨を断つ」戦い方で、幾多の名勝負と逆転劇を生んできた。しかし、20歳の時の立嶋はもうどこにもいない。それは本人が一番わかっているはずだ。100回も繰り返した減量、激しい蹴り合い、殴り合いが肉体にダメージを与えないはずはない。本人はきっと「大丈夫です」と笑うだろうが......。
100戦目を終えた立嶋は、戦いの場を用意されれば、またリングに上がるだろう。
「自分の人生は自分の為に、誰も代わりに生きてくれない。僕は自分の為に息をして、自分の為に頑張りたい。そして、自分の為に笑いたい」(『ざまぁみろ!』より)
立嶋に引きつけられる者たちは、不器用な男の無骨な戦いをただ見守るしかない。ならば......と思う。最後の試合は、笑いながらリングから降りてほしいと。
【写真】100戦目は顔面流血の激闘に。51歳でリングに立つ「キック界のカリスマ」立嶋篤史
3 / 3