井上尚弥の「匂わせツイート」も現役復帰を後押し。元太平洋王者・井上浩樹はアニメ『バンドリ』を見て最終決断を下した (3ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro
  • 立松尚積●写真 photo by Tatematsu Naozumi

――尚弥選手が引っ張り上げてくれたんですね。

「『会長に言いやすくしてくれたな』と思いましたよ(笑)。そのあと、尚弥の練習についていった時に意を決して伝えたら、大橋会長は『待ってたよ』と快く受け入れてくれました」

――大橋会長も気持ちがわかっていたのか、浩樹選手の引退届をコミッションに提出していなかったそうですね?

「それもうれしかったですね。なので、『少し休んだ』という形になりました」

――浩樹選手はかなりケガも抱えていたそうですが、それは回復したんですか?

「ケガは昔から多くて、腰をはじめ、体全体で悪いところがたくさんありました。でも、休養している間に『体のメンテナンスをさせてください』と名乗り出てくれた方がいて、1年くらい診てもらっています。

 それ以前は、ケガをしない体作りができていなかった。試合で頑張るために合宿に行くのに、そこでケガをしてしまって試合がうまくいかないこともあったり。その繰り返しだったのが、復帰後は合宿でかなり追い込んでもケガをしなくなりました」

――休養期間を経て、ボクシングとの向き合い方は変わりましたか?

「以前は、本当に自分のことしか考えてなかったな、と思いました。引退前の最後の試合はコロナ禍の影響で無観客でしたし、応援してくれていた方たちに対しても『それで終わりなのは失礼なのかな』と。あらためて恩返しがしたいですし、モチベーションも上がってます」

以前は闘争心ではなく、逃走心があった

――休養期間、ボクシングからは完全に離れていたんですか?

「いえ、完全に離れていたわけではありません。僕はサウスポーなので、尚弥と拓真がサウスポーの選手と試合が決まった時には、いきなり12ラウンドのマススパーリング(軽く攻撃を当てる程度のスパーリング)をやらされた時もありました(笑)。尚弥の昨年6月の試合、マイケル・ダスマリナス戦も相手がサウスポーだったので、ラスベガスの練習場でもずっとマスの相手を務めました」

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