赤井沙希への偏見とバッシングの嵐。それでも男子プロレスラーと闘い続ける理由 (4ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

【「キャリアベストバウト」と評されたクリス戦】

 今年5月4日、DDT EXTREM級王座、及びアイアンマンヘビーメタル級王座を賭けて、王者クリス・ブルックスと対戦した。女子と男子の一騎打ち。EXTREM級王座の試合形式は王者が決めることになっているが、クリスは対女子プロレスラーの特別なルールを設けず、あえて「通常ルールのプロレスにしよう」と提案した。赤井が勝っても負けても、そのルールがあったからだと言われるのが自分にとって本意ではないと。

「クリスは私を、女子という目線で見ていないと気づいて、すごく嬉しかったです。私はずっとこういうふうに見てほしかったんだなって思いました。試合前から、クリスのことをリスペクトしました」

 結果は負けてしまったが、かつてないほどの熱い闘いを繰り広げ、赤井のキャリアの中でベストバウトと評された。

「クリスとはもう一度やりたいです。リベンジもしたいですし、クリスがDDTを選んでくれて本当に感謝している。クリス自身もDDTになじもうとしてくれたのもあるけど、クリスがいてこそDDT。大事なパーツの一部ですね」

 2013年にプロレスデビューした赤井沙希。最初は半年だけのつもりだった。それが1年だけ、2年だけと延びていき、今年、キャリア8年になる。決して、平坦な道のりではなかった。バッシングもされた。女性ならではの悩みもある。しかし、だれよりもプロレスを愛し、そしてDDTを愛している。

 赤井沙希はあくまでDDTの華。それ以上の存在ではない――。私の心のどこかにあった先入観が、「DDTという形のないものを好きになってしまった」と嬉しそうに話す彼女を見てぶち壊されたのだった。

◆連載1:悩み続けたアイドル時代。伊藤麻希はプロレスに生きる道を見つけた>>

【プロフィール】
■赤井沙希(あかい・さき)
DDTプロレスリング所属。1987年1月24日、大阪府生まれ、京都府育ち。174cm、53kg。中学2年生の時、街でスカウトされ、モデルデビュー。2011年、TBS系ドラマ『ハッスルガール!』でプロレスのリングに上がる。2013年8月18日、DDT両国国技館大会にて本格的にプロレスデビュー。2014年、「プロレス大賞」で女子初の新人賞を受賞。翌年1月、アイアンマンヘビーメタル級王座を獲得。2018年10月、DDTに正式所属となる。2020年6月、KO-D6人タッグ王座を獲得。男子プロレス団体の紅一点として活躍を続ける。
Twitter>>@SakiAkai

【大会情報】
「D王 GRAND PRIX 2021 Ⅱ in Ota-ku」
日時:2021年11月3日(水祝) 開場12:30 開始14:00
会場:東京・大田区総合体育館
公式サイト>>

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