2021.08.05

レスリングで姉妹金メダルへ大きく前進。なぜ妹の川井友香子は変わったのか

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • photo by JMPA

 気弱な妹は、たくましい世界一のファイターへ変わっていた。8月4日。レスリングの女子62キロ級決勝で、川井友香子が初出場の五輪で金メダルを獲得した。終了ブザーが鳴ると、23歳の妹はマットで泣き、姉の26歳の梨紗子はスタンドで涙を流した。

 妹は涙声で漏らした。

「ほんとうに言葉にできないくらいうれしくて。ずっと、ずっと、世界の金メダルがほしかった」

 5年前のリオデジャネイロ五輪は姉の決勝戦をスタンドから見ていた。その姉から、「オリンピックの表彰台のてっぺんからの景色は違うから」と言われていた。

「どんな景色だろうと思って、今までやってきたんですけど、やっと見ることができました。すごくいい景色でした」

レスリング女子62キロ級で優勝した川合友香子。姉妹で金メダルは実現するか。 レスリング女子62キロ級で優勝した川合友香子。姉妹で金メダルは実現するか。 この記事に関連する写真を見る  姉妹の絆はすこぶる強い。2019年。メダル獲得で東京五輪代表権が決まる世界選手権だった。姉は優勝し、妹は3位決定戦に回った。その試合の朝、姉は友香子の練習相手を買って出た。そして、妹は勝って銅メダルを獲得した。この時も、妹はマットで、姉はスタンドで泣いた。


 川井姉妹が東京五輪の出場権をそろって獲得した時から、ふたりの合言葉は『姉妹で東京五輪金メダル』となった。まずは妹が幕張メッセの東京五輪決勝の舞台に立った。姉は試合前、こう太鼓判を押していた。「びっくりするほど、友香子は強くなっている。好きなようにやればおのずと結果はついてくる」と。

 その決勝戦。どっしりとマットに両足をのせ、最後の最後まで、2019年世界選手権覇者のアイスルー・ティニベコワ(キルギス)を攻め続けた。会心の片足タックルが決まった。「記憶がなくて、気がついたら入っていた」。終盤の相手の猛反撃をおさえ、1ポイント差で逃げ切った。4-3の判定勝ち。よく我慢した。最後まで攻め続ける気持ちが金メダルにつながった。

 石川県出身。友香子は3姉妹の次女で、小さい頃はままごとや手芸で遊んでいた。姉妹では一番、気弱だった。母の初江さんがコーチを務めるレスリング教室に、一人ぼっちにされるのが嫌で遅れて加わった。長女の梨紗子が思い出す。「(3姉妹で)一番レスリングに向いていなくて、ほんとうにとろくて、女の子という感じでしたね」と。