2019.06.01

村田諒太とは違う伊藤雅雪の状況。
アメリカで再脚光を浴びられるか

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by getty Images

「日本の人たちに申し訳ないです。僕は夢を見ていた。ちょっと簡単に見れない世界なんで、せっかく僕に期待してくれていた人たちがいたのに、それを裏切る形になったのが申し訳ないですね・・・・・・」

 現地時間5月25日、フロリダ州キシミー。WBO世界スーパーフェザー級王者から”前王者”になった伊藤雅雪(横浜光ジム)はそう言葉を絞り出した。

 この日、オセオラ・ヘリテージ・パークで行なわれた2度目の防衛戦で、伊藤は挑戦者ジャメル・ヘリング(アメリカ)に判定負け。3人のジャッジは、116-112がひとり、118-110が2人と、それぞれ大差をつける完敗だった。
 
ヘリング(左)に敗れ、王座から陥落した伊藤雅雪(右) 身長、リーチで伊藤を4cmずつ上回る長身サウスポーのヘリングは、序盤から鋭い右のジャブでペースを掌握。「3回、4回くらいに、このままじゃまずいなと思った」という伊藤は中盤から接近戦を仕掛けるも、なかなか思いどおりには機能しない。距離が詰まると飛んでくるヘリングの左ボディも厄介で、28歳の王者が得意とする右パンチはついに火を吹かないままだった。

 リングサイドにはWBC同級王者ミゲール・ベルチェルト(メキシコ)が姿を見せており、興行を主催したトップランク社は統一戦のシナリオを着々と進めていた。メキシコ人王者とのチャンピオン同士の対決となれば、アメリカでも注目されるファイトとなる。爽やかなキャラクターとスタイリッシュなスタイルを持つ伊藤は、そんな大一番に”あと一歩”まで迫っていたのだ。

 しかし――。ヘリング相手に空転を続けたことで、ドリームプランは霧散。それでも伊藤は、痛恨の敗北を喫した直後の控え室の前で気丈に記者たちに対応した。目を赤く染めながら悔しい一戦を振り返ろうとする姿は、失ったものの大きさを象徴しているようでもあった。

 試合後、盛んに指摘されたのは伊藤のサウスポー対策の失敗だった。王者が日本で喫した唯一の敗戦【2015年2月の内藤律樹(E&Jカシアス・ボクシングジム)戦】もサウスポーが相手。”左が苦手”という話は戦前から囁(ささや)かれており、結果的に伊藤本人もヘリングに綺麗にいなされてしまったことを認めていた。

「一番わかりやすい形になってしまいましたね。自分が追う、逃げられる。いいルーム(パンチを出すための空間)を作れず、相手が打って、くっつく。あとは外から入っていくところを打たれる。自分としてはもっと距離を潰(つぶ)して、パンチも当たると思っていたんですけど」