2019.04.10

柔道100キロ級の未完の大器。
飯田健太郎にもう負けは許されない

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

 全日本選抜柔道体重別選手権(福岡国際センター)の2日目。前日、2016年リオ五輪の100キロ級銅メダリストである羽賀龍之介(旭化成)に敗れた飯田健太郎(国士舘大3年)は、男女の決勝が終わるまで選手席から一歩も動かず、試合を眺めていた。

体重別選手権の100キロ級準決勝で羽賀龍之介に敗れた飯田健太郎 試合が落ち着いたタイミングで、声を掛けた。

「自分の世界選手権代表は、ないと思います。でも、まだ東京オリンピックをあきらめる段階じゃない。すぐ(4月29日)に全日本選手権もありますから、まずはそこでアピールしたい。昨日の試合後、(国士舘大の)鈴木(桂治)先生からは、『ここで腐っちゃダメだぞ』と言われました」

 飯田が予見したとおり、大会後に行なわれた強化委員会で決まった代表選手に、飯田の名前はなかった。全7階級のうち2階級はふたりの代表が選出されたが、飯田が戦う100キロ級は、ウルフ・アロン(了徳寺学園職員)が選ばれただけ。飯田は補欠に回ることになった。

 柔道関係者の誰もがその才能に惚れ込む大器が飯田だ。

身長は188センチで、試合中は背筋を伸ばし凛とした姿勢で相手に向かっていく。体に柔軟性があり、バランス感覚に秀でていて、簡単には投げられない。そして、内股や俵投げといった大技を得意とする。さらに言えば、この甘いマスクはスター性十分である。足りないのは、日本一、そして世界王者の称号である。

 初めて飯田の柔道を見たのは、彼が高校3年生だった3年前のこの大会だが、現全日本男子チームの井上康生監督や、国士舘大で飯田を指導している鈴木桂治氏、さらに石井慧(現格闘家)といった歴代のトップ選手と同様、10代のうちに国内のトップに上り詰め、そして世界に羽ばたいていくことを予感させた。

 その当時の飯田について、以前、井上監督はこんなことを話してくれた。

「しっかりした技があり、考え方に柔軟性があり、ひとつの形にこだわらず、柔道の面白さを、自分なりに畳の上で表現している。ルックスもいいし、柔道のスタイルもいい。柔道界の顔になっていく逸材ではないかと思います」