村田諒太攻略法を明かす新王者。不利なラウンドで勝利の手応えがあった (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/AFLO

――なるほど。村田選手は試合後に「右が研究されていた」と語っていましたが、その距離感もカギのひとつだったんですね。他のパンチはどうでした? 

「ボディを狙ってくる左フックも強かったですね。打つスペースを与えないように、自分の左腕をボディから離さないように注意しました。私たちは多くのホームワーク(課題)をこなし、どんな展開になっても驚かないように懸命に準備しました。今回の勝因は、相手の戦力を熟知していたことだと考えています」

――パワーに関しては、IBF世界ウェルター級王者エロール・スペンス・ジュニア(アメリカ/24戦全勝21KO)とスパーリングを積んだおかげで、村田のパンチ力にも驚かずに済んだという話をしていましたね。

「スペンスはこれまで私が経験した中でも飛び抜けたパワーの持ち主です。村田も多くの選手をKOできるだけのパンチ力を持っていますが、スペンスの破壊力は別次元で、しかも左右両方でさまざまなパンチを放つことができる。そんな選手と多くのスパーリングを重ねてきたことは、間違いなく私の助けになっています。サウスポー、オーソドックスの違いはありますが、スペンスも村田同様に常に前に出てくるパンチャーなので、そういった意味でも彼との練習はいい経験になったのでしょう」

――戦い方はほぼプラン通りだったようですが、村田選手の実力も想定通りだったんでしょうか? 

「自分が考えていた通りの選手でした。コンディションがよく、タフで、ハードパンチを持った元五輪金メダリスト。実際に対戦してみると印象が違うことが多いので、想定通りというのは珍しいことだったと思います」

――試合前、自分との防衛戦も終わっていないのに、みんなが来春の村田vsゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)戦のプランの話をしているのは「ちょっと失礼じゃないか」と述べてました。トップランクのボブ・アラム・プロモーターが、会見時にもゴロフキンの名前を出したことには面食らったのでは?

「自分があまり重要だと捉えられていないように感じたのは事実です。試合前に話したように、村田本人が私のことを見過ごしていたとは思っていません。ゴロフキン戦のことも、彼自身の口から出た話ではないこともわかっています。

 ただ、周囲の人たちは私との試合よりも先のことを考えており、私の能力をリスペクトしていないように感じました。ゴロフキンの名前ばかりが出たことには驚かされましたが、こういう結果になり、今後は私もリスペクトされるだろうことをうれしく思っています」

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