女子レスリング「金メダル0」で王国崩壊の危機。東京五輪に間に合うか (4ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 リオの栄光を知る唯一の選手として、今大会、川井が孤軍奮闘したものの、「女子レスリング界を引っ張らなければ」というプレッシャーが重くのしかかり、準決勝で敗れて3位となった。吉田や伊調の後を引き継ぐのは早かったといえよう。ましてや、現在のレスリング界を取り巻く状況を考えれば、それはあまりにも酷だった。

「騒がれているからこそ、自分が勝たなきゃいけなかった。至学館のみんなが大変ななかでやっているので、至学館の強さを出さなきゃいけなかった」

 敗戦のショックから立ち上がれず、レフェリーに促(うなが)されてマットを後にした川井は、そうコメントした。

 戦いに集中しなければならない選手にこんなことを考えさせ、言わせる協会、大学に、「アスリートファースト」はまったく見えてこない。

 世界でもっとも早く強化に取り組み、オリンピック4大会計18個の金メダルのうち、実に11個を獲得してきた日本女子レスリング。だが、その輝かしい伝統は今、途切れようとしている。

 2年後の東京オリンピックに向けて、日本のレスリング界が今、真っ先にしなければならないことは、「日本の宝」伊調馨の復活を全力で支えることだ。伊調を東京オリンピック・レスリング女子日本代表チームの核とする以外に、王国再建の道はない。

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