女子レスリング「金メダル0」で
王国崩壊の危機。東京五輪に間に合うか (2ページ目)
そして2010年広州アジア大会。国内大会すべてで圧勝しながらも、伊調馨は代表入りできず。この点については、公益財団法人日本レスリング協会第三者委員会が栄によるパワハラのひとつとして認定しているが、伊調に替わって63キロ級で出場した西牧未央が振るわず7位。一度は引退しながらも48キロ級に下げて復帰した坂本日登美(現・小原/自衛隊体育学校)は調整に失敗し、本来の力を発揮できず銅メダル、浜口も前回から順位をひとつ下げて銅メダルだった。
それでも、連勝街道を驀進中の吉田が金メダルに輝き、「女子レスリング王国」の地位を死守。2年後のロンドンオリンピックは伊調が出場権を奪い、吉田、小原とともに金メダル3個を獲って格の違いを見せつけた。
その後、女子のオリンピック実施階級は6階級に増え、同時に階級区分も変更されたが、2014年仁川アジア大会は変則的な48キロ級、55キロ級、63キロ級、75キロ級の4階級で実施。ロンドンオリンピック後、階級を下げて直前の世界選手権58キロ級代表となっていた伊調は、またしてもアジア大会代表となれず。ちなみに、吉田は世界選手権には53キロ級で出場しながら、アジア大会では世界選手権55キロ級の代表選手を差し置いて選ばれたが......。
このアジア大会、過去3回のオリンピックに浜口、吉田、小原、伊調姉妹の5名しか出場していなかった日本女子に若い力が台頭した。48キロ級の登坂絵莉(とうさか・えり/東新住建)と、63キロ級の渡利璃穏(わたり・りお/アイシンAW)である。ふたりは吉田とともにアジア大会優勝を果たすと、2年後のリオデジャネイロオリンピックにも出場(渡利は75キロ級)する。2013年から世界選手権2連覇を遂げていた登坂はアジア大会を制してさらに自信を深め、2015年世界選手権3連覇、そして2016年オリンピック金メダルへと一気に駆け上がった。
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