レスリング「栄監督解任の影響説」払拭へ、
川井梨紗子は勝つしかない (2ページ目)
「私が期待されていることもわかっていたし、私が勝たなきゃいけないって思いももちろんありました......。なので、準決勝で負けた後、いろいろ考えました。私は、トーナメントで負けてからもう一回試合をする経験が今までなかったので、すごい気持ちの作り方が難しかったです。......まだ、沙保里さんみたいな器の大きい人にはなれていないなって思いました」
ここ数ヵ月で川井を取り巻く環境が大きく変わっていたことは、先の報道などから想像できるだろう。今まで師として慕っていた栄和人監督が現場を去り、監督不在のなか練習に励んできた。そのため今回の準決勝敗退は、その理由を栄監督の不在と紐づけて考えられてしまうのも無理はない。
現に、至学館大で練習している55キロ級の奥野春菜も、世界選手権王者でありながら、こちらも準決勝で敗れて決勝進出を逃している。監督不在の影響がまったくないとは言い切れないだろう。だからこそ、金メダルを獲って周りを黙らせたいという思いが人一倍強かったはずだ。川井はその件について、自分の思いをハッキリ口にした。
「私は自分で考えながら、しっかり練習をやってきています。もちろん、今までは監督に教えてもらいながらやってきたのは確かですけども、私ももう社会人だし、自分でレスリングのことは考えられるので。周りには『監督がいなくなったから』とか思われるとは思いますが、私は関係ないと思っています。実力です」
その表情からは、無念さがにじんでいた。
準決勝で川井に勝利し、今回優勝したモンゴルのオーコンは、昨年の世界選手権の63キロ級の王者であり、2016年1月のヤリギン国際大会でも伊調馨を下している強豪選手だ。63キロ級は昨年の世界選手権で川井が優勝した階級(60キロ級)よりもひとつ上の階級であり、川井は今回、階級をひとつ上げて大会に臨んだ。それもあってか、マットに立った印象はオーコンのほうがひと回り身体が大きく感じられた。
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