2018.03.03

元いじめられっ子のボクシング
世界統一王者・田口良一とは何者なのか

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • 写真●山口裕朗 photo by Yamaguchi Hiroaki

——アメリカでは、タイトルだけでなく面白い試合を選手に求める傾向があります。それに対して勝利が重視されがちな日本では、田口選手のような考えを持つ選手はあまり多くないように感じますが。

「試合が静かだと、なんか恥ずかしいんですよ。会場が盛り上がらなかった試合はビデオでも見たくないくらい。早送りしたりします(笑)。面白い試合をしたいということは、かなり昔から大切にしていることです」

——プロになった時点からもう少し遡ってもらって、ボクシングを始めたきっかけを教えてください。

「僕は小学校の時にいじめられていたから、強くなりたかったんです。やり返したいとかではなかったんですけど、とにかく自分に自信を持ちたかった。そんなときに、漫画の『はじめの一歩』を読んで、いじめられっ子だった主人公に自分を重ね合わせたんです。

それが中学校1年のときで、実際にボクシングを始めたのは3年の秋頃でした。今では(いじめていた人も)毎回試合を観にきてくれるんですよ(笑)。それも含めて、『はじめの一歩』と似ているなと思います」

——ワタナベジムを選んだ経緯は?

「まずは地元のボクシング教室に、高校1年からは横浜光ジムに通いました。畑山隆則さんや新井田豊さんがいるジムだったんですけど、そこでは遊びを優先してしまい、すぐにやめてしまったんです。みんなに『ボクシングをやっている』と言っておきながら、プロで試合をやってないのが情けなくて。本格的にやろうとジムを探していたときに、電車からワタナベジムの看板が見えて、直感的にここだなと。高校卒業の1カ月後から通い始めました」

——好きだったボクサーはいますか?

「畑山さんと新井田さんですね。自分が横浜光ジムに通っていた頃はすでに畑山さんは引退されていたんですけど、たまにジムで見かけることもありました。当時は2人とも話しかけられなかったですね。でも、ワタナベジムでやりはじめてしばらくした後に、新井田さんからスパーの申し入れがあったんです。まともに話をしたことがなかったのに、自分のことを覚えていてくれたみたいで。それがめちゃくちゃ嬉しくて感激しました」