井上康生が語った「リオ五輪、男子柔道全階級メダル獲得」の真実 (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

── 阿部選手は担ぎ技、飯田選手は内股を得意とし、一本を狙い続ける攻撃柔道が持ち味です。

「しっかり一本を奪える技を持っているという点で、見る人を魅了する柔道ができる選手だと思います。彼らは考え方が柔軟だし、柔道もひとつの形に固執しない。なんというんですかね、柔道の面白さを畳の上で、考え、感じながら、表現している。新しい世代の柔道家だと思います」

──  飯田選手が面白いことを言っていたんです。海外の合宿に参加して、「根性だけじゃなく、効率的な練習、柔道の大切さに気づいた」と。これって、井上監督が2年間のイギリス留学で導き出した答えのひとつで、だからこそ監督に就任してからは、ひたすら代表選手に厳しいトレーニング・稽古を課すだけだった前体制下での合宿を見直し、テーマを設けて、量だけでなく質を伴う合宿を行なうようになった。

「根性論も時には必要だとは思いますが、同時に効率性を求めることも大事なんです」

── それを18歳の高校生が口にしたから、驚いたのです。日本の柔道界も変わりましたね。

「しっかり考えられる力がある。頼もしく感じます。まだまだ高校生で伸びしろがある。これからどういう選手に育っていくのか、楽しみですね」

── あらためてお聞きしますが、リオ五輪では全階級でメダルを獲得しました。その要因はどこにあると思いますか。

「一概にこれと言い切ることはできませんよね。いろいろなことが複合的に絡み合って、あの結果につながったと思います。ひとつ言えるのは、これだけの情報化社会ですから、科学的な力は利用しました。畳の上の稽古だけでなく、ライバル選手の能力や柔道の傾向をデータ化し、研究と対策を行なった」

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