祝・国民栄誉賞。謎めいた伊調馨の人柄がわかる「3つのキーワード」 (5ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by JMPA

 伊調は「沙保里さんがいなければ、レスリングはここまで注目してもらえなかった。負担がいってしまい、本当に申し訳ないと思っている」と常々語っている。そして、世間への露出度は低いかもしれないが、「自分は現場が似合っている」からと、地方にも出向いて講演や教室などで子どもたちにレスリングの魅力を伝え、吉田とは違ったやり方で愛するレスリングの普及、メジャー化に努めている。

 今年1月、新聞社が主催する日本スポーツ賞グランプリの表彰式で、伊調はすでにグランプリを2度受賞している吉田を引き合いに、「歴史があり、名誉ある賞をいただけるのが私でいいのかな......。こういうことは沙保里さんに任せているので」と苦笑いしながらコメントし、会場を笑わせた。

 さらに、リオで吉田が4連覇できずに銀メダルに終わったときも、「沙保里さんを支えて、少しでも負担を軽くしてあげればよかった」と、心の底から後悔していた。

 一方の吉田も、「私だけがレスリングを引っ張ってきたわけじゃない。カオリンがいたから、女子レスリングを率いる第一人者としての責任、日の丸の重さに耐え、困難を乗り越えることができた」と振り返り、伊調とともに戦ってきたことを誇りとしている。

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