辰吉寿以輝ボクサーデビュー「父からは何も教わっていない」 (2ページ目)

  • 原 功●取材・文 text by Hara Isao

――その父からは、ボクシングでのアドバイスやコーチをしてもらっていますか?

寿以輝 (父とは)ボクシングの話はしないし、教わってもいません。映像は見ているけれど、ボクシングは自分で(考えて)やっています。

――でも、父親とボクシングスタイルは似ていますね。

寿以輝 自分では似ているとは思っていません。

 絵に描いたような淡々とした一問一答だ。だが、過去を振り返れば父親の丈一郎も、プロデビュー前後は能弁というわけではなかった。

 寿以輝は1996年8月3日、大阪府守口市で生まれた。その5ヵ月前、父親はダニエル・サラゴサ(メキシコ)の持つWBC世界スーパーバンタム級王座に挑んで11回負傷TKO負けを喫しており、寿以輝の生まれたときは再起の道を模索している最中だった。ちなみに、シリモンコン・ナコントンパークビュー(タイ)を倒してWBC世界バンタム級チャンピオンに返り咲いたのは、寿以輝が生まれた翌年11月のことである。

 寿以輝は幼稚園のころにボクシングを始めたが、それは、「父親の影響というわけではなく、(4歳上の)お兄ちゃんがやっていたから」という理由だった。その当時から「プロになると決めていた」というから、決意は固かったようだ。

 ただし、本格的にボクシングに取り組むようになったのは近年のことで、ジムからは85キロあった体重を20キロ落とすよう指示を受けたという。その後、減量に成功した寿以輝は、昨年11月にテレビカメラ4台・報道陣50人以上が見守る中でプロテストを受験し、C級ライセンスを獲得した。異常ともいえる注目度の高さだけに、「緊張しました」と振り返るものの、「それがプレッシャーになることはありません。逆に嬉しい」と歓迎している様子だ。父親と同じく、肝が据わっているのだろう。

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