足掛け21年。引退するピーター・アーツとの思い出を振り返る
キックボクサーとして一時代を築いた『怪童』、ピーター・アーツが引退する。14歳でキックボクシングを始めてから29年、先日行なわれた引退試合発表の記者会見後に話を聞くと、アーツは、「後悔はない」と言い切った。
「ファイターとして、やれるべきことはやった。もう十分だ。人生は楽しむことが一番大事。もし、もう一度人生をやれるのだったら、僕はもう一度、同じ道を歩むと思う」
王者セーム・シュルト(左)にK-1初黒星をつけたのもピーター・アーツ(右)だった 調べてみると、筆者が初めてアーツにインタビューを試みたのは1992年5月。まだ、この世にK-1は存在しておらず、リングスという団体の招きで初来日を果たした時だ。
アーツにとって、これが日本で初めてのインタビューだったと聞く。素顔のアーツは、大学に籍を置く21歳の純朴な青年だった。もっとも、そんな外見とは裏腹に、言うことは大きかった。
「誰とやっても、負ける気はしない」
K-1開幕前夜、キックボクシングの世界では、アメリカのモーリス・スミスが史上最強の名を欲しいままにしていた。しかし、この年の4月、つまりインタビューする1ヵ月ほど前に、アーツはスミスに初めて土をつけ、世代交代をアピールしたばかりだった。
その後の活躍は言わずもがな。K-1ワールドGPでは、1994年の第2回大会から述べ3度も優勝している。その強さがピークだったのは、1998年のGPだろうか。1回戦(準々決勝)から決勝まで3試合連続1ラウンドKOで相手を仕留め、会場となった東京ドームにトレードマークともいえる「ガハハッ」という高笑いを響かせた。
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