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【男子バレー】世界バレー予選敗退の真相を探る コートで「ごめん」と謝る選手がいた (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

「(表彰台という)目標にはほど遠かったです。難しいなって思いました。力を出せたか、というとそうでないし、悔いが残る大会になりました」

 主将である石川はそう言って無念さを滲ませ、自らを責めた。

「なかなか解決策を見つけられず......自分は困ったときに頼られる立場だと思うので、いつでも解決策を出せるようにしないといけない。そこで力を出せなかったのは"自分に足りなかった"という部分で......」

 バレーはひとりでは勝てない。コートにあるボールを6人が落とさず、どうつなげるか。ひとつひとつのプレーの細部の精巧さ、精密さこそ、日本バレーの真価と言える。相手の対策もあってブロックのつき方などが研究され、監督も選手も入れ替わり、そこがアップデートできていなかった。その間隙を、イタリアやポーランドで活躍する選手を擁する伏兵に突かれた―――。それが敗退の真相か。

 最後、日本はリビアにストレートで勝利し、技術的に劣っているわけではないことを証明した。エバデダン ラリー、佐藤駿一郎というミドルがクイック、ブロックで点数を重ね、宮浦健人は3本のエースを奪い取った。髙橋は自慢の守備でレセプション、ディグでオールラウンドぶりを高らかに示した。

「こっちがしっかりパスを返し、サイドアウトを取ることができました。今日のサイドアウト率は高かったと思います。自分の決定率は低かったですが」

 石川は謙遜してそう語ったが、自身のアタック11本はチーム最多、決定率も56.25%まで上げた。彼が輝いた日本はやはり強い。3セット目、髙橋の神がかったディグから石川がツーで決めた一撃などは真骨頂だった。

「この"負け"は忘れない。今日から自分たちの戦いが始まっていると思っていました!」

 リビアに勝利後、髙橋は明るい声で語った。悪くないリスタートだったと言えるだろう。不動の強者となるために―――。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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