【男子バレー】石川祐希が振り返る世界バレー、衝撃の黒星発進「こういう経験で成長するしかない」 (3ページ目)
【「相手よりいいプレーをして勝つ」】
その運命を裏返すには、エースの石川が雄叫びを上げる回数を増やすしかなかったが、いつも2枚以上のブロックにつかれていた。
「相手のサーブがよかったのもそう(なった原因)ですし、ハイボールのケースでBパス(セッターが少し動いてオーバーハンドでトスを上げられる範囲に返ってくるパス)が少し多かったですね。そうなるとクイックは外し気味になるので。どこのチームも僕たち相手だと2枚になるケースが多かったなって」
石川は論理的に語り、こうも続けた。
「セッターの大宅(真樹)選手とのコンビは問題なかったですよ! しっかり打てているので、(合宿での)練習の成果は出ているなって思います。1本が欲しいところで出てこないとか、そういうのはセッターが誰であれ、あるものなので」
そう語った石川は少し頬を緩めた。特記すべきは、彼が嫌な顔ひとつせずに、記者たちの質問に丁寧に答え、最後まで取材エリアに残っていた点だ。
最後に問う。
――キャプテンという立場で、負けられないカナダ戦にどう臨みますか?
石川は正面から目を見て答えた。
「カナダ戦に向け、まずは負けを引きずらないことだと思うんですが、完全に払拭できるわけではありません。今は大会が始まって、そのなかでどう戦っていくか。いい経験にもなるはずなので、もう一度やるべきことを考えて準備していくべきかなって。あと、自分たちにフォーカスしすぎているかな、と思います。試合に勝つには、相手よりも何本かいいプレーをすれば、間違いなく点数が入って勝てるはずなんです。相手に対してもフォーカスし、相手よりもいいプレーをして勝つ。その気持ちの持ち方も大事かなって」
その不敵な割りきりこそ、イタリアで最高のプレーヤーになった所以だろう。勝利の女神に愛されるには――。石川はその手順を知り尽くしているはずだ。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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