【男子バレー】小川智大が思う世界に勝つために必要なこと 「真剣にやる楽しさ」を見つけて世界屈指のリベロに成長 (4ページ目)
【世界バレーは「予選ラウンドが大事」】
最後に訊いた。
――タイムマシンに乗って、泣き虫だった"小学生の智大くん"に会ったら、小川選手はなんと声をかけますか?
「うーん......何も言わないと思います。当時はバレーボール選手になるとは決めていなかったですけど、周囲には『なる』って言っていました(笑)。心の底から思っていたか、というと、勉強をしたくない言い訳だったのかもしれませんけど」
彼は茶化すように言った。
――"智大くん"は小川選手に気づいたら、なんと言うでしょうか?
「『よく頑張ってるね』ですかね(笑)。小学生の時の自分も、学校が終わって夕方5時から夜9時までの練習という生活を、ずっと当たり前のようにしていて、いろんなことを犠牲にしていましたから。ほとんど休みがなくて、友達と遊びに行ったりもできなかったんで」
小川は言うが、今の自分が充実しているからこそ、そのやりとりになるのだろう。
まもなく開幕する世界バレーに向け、彼は虎視眈々だった。フランス、イタリア、ポーランド、ブラジルといった強豪を下すには、彼のディフェンスが欠かせない。
「パリ五輪でも思ったんですが、まずは予選ラウンド(相手はトルコ、カナダ、リビア)が大事。けっこう苦しいと思うんですよ。でも、それを乗り切ったら、決勝ラウンドでは準備が完璧に整っていると思います。気持ちが勝手に乗っかって、緊張もなく"やるしかない"という状態になっているはずです」
小川は明朗な声に不敵さを混ぜた。
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【プロフィール】
◆小川智大(おがわ・ともひろ)
1996年7月4日生まれ。神奈川県出身。175cm。リベロ。サントリーサンバーズ大阪所属。川崎橘高校から明治大学を経て、豊田合成トレフェルサ(現ウルフドッグス名古屋)に入団。2020-21シーズンから3シーズン連続でVリーグのベストリベロ賞を獲得し、21-22シーズンの天皇杯、22-23シーズンはVリーグ制覇に貢献した。SVリーグ1年目はジェイテクトSTINGS愛知で活躍。リーグ終了後、サントリーサンバーズ大阪への入団が発表された。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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