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【女子バレー】世界バレーで見せたメダル以上の高揚感と石川真佑の有言実行 日本代表の新しい物語 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

「勝負どころで、どう攻めたら相手が対応しづらいか。攻撃の精度を高めていかないと。たとえば得意なコンビのところで(相手に)絞られてしまい、対応されることもすでに経験しているので、自分たちで打開策を見つけていけるように。"ここのプレーでは、スパイクもこういう打ち方をする"というトライはいくつもしてきました」

 石川は実力を見せつけ、大会のベスト6(ブラジルのガビとともにアウトサイドヒッターで)に選出されている。

 明るく前向きなチームは、選手たちを目覚めさせた。

 ミドルブロッカーの島村春世は、ベテランの輝きを見せている。日本の長所である機動力を用い、ブロード攻撃は強力なカードになっていた。流れが変わりそうな場面で、彼女の一撃は出色だった。また、同じミドルの宮部藍梨もブロック、サーブ、クイック、レシーブとオールラウンドで高い能力を見せた。他と違うリズムのプレーは異色だ。

 ミドルブロッカーは高さだけで言えば、世界トップレベルには劣るが、独自のアドバンテージを発揮していた。

 そして3位決定戦での、アウトサイドヒッターの佐藤淑乃の覚醒は瞠目に値した。ここまでなかなか真価を見せられていなかったが、ブラジルを相手に、吹っきれたようにアタックが決まり、得意のバックアタックで打ち抜いた。また、サーブでも3本のエースを獲得、ブロックも2本。チーム最多34得点で、試合中にも変身するかのような輝きだった。

 明るさは、チームにも選手にも活気を与える。強さの源泉となる。何より、見ている人間を虜にすることで、物語も生まれるだろう。

 日本女子バレーの新しいストーリーの始まりだ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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