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【バレーボール女子代表】ネーションズリーグで攻撃を牽引 新エース・佐藤淑乃が変身を遂げつつある (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【フィニッシャーの気概】

 だが5月、SVリーグファイナルに勝ち進んでいたNECだが、マーヴェラスに完膚なきまでに叩かれ、初代女王の座を逃している。エース佐藤にとっては大きな失望だった。

「決勝の舞台を楽しみにしていました。気持ちは前向きで、強気だったと思いますが、プレーがついていかず......熱くなりすぎたかもしれません。ブロックは、自分の前にでかい選手2枚がくるのはわかっていて。自分の癖や強みを全員がわかっているなか、レギュラーシーズンでできるようになった"引き出し"を全部出したかったのですが......。自分のサーブでブレークを取れたらチームはよい流れになるのですが、相手も何が何でも1回で切ってきて......」

 試合後に会見上に現れた佐藤は、訥々と語って溢れ出る涙を拭った。堪えようとしても堰き止められない。さまざまな感情が体内でのたうち回っていたのだろう。

 どんなボールゲームでも、得点を決めるプレーを託された選手は、感情を爆発させるパーソナリティに恵まれている。暴走することもあるだけに、それをコントロールする理性も必要なのだが、相手を屈服させ、状況を打開するには相応のエネルギーが欠かせない。

 佐藤はその点で生来的なフィニッシャーと言える。スパイク一本で息の根を止める。そこに100%、集中できる。それは気負いにもつながるが、気概の強さがなかったら、「世界」では通用しないのだ。

「今シーズンは常に自分の前に外国人選手を中心に高いブロッカーが待っているなか、その高さに負けず、ブロックを利用することを武器にすることはできたかなと思います。今後は、自分の武器をひとつからふたつへ、ふたつから三つへと、どんどん増やせるように。どんなところからでも点を取れることが必要になってくるかなと」

 SVリーグ元年、佐藤は最優秀新人賞を受賞し、ベスト6のアウトサイドヒッターにも選ばれている。総得点数は3位で上位6名では唯一の日本人だ。

 翌7月10日、韓国戦。石川を温存したチームで、佐藤は新エースの矜持(きょうじ)を見せている。

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