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髙橋藍のACLで見せた涙と笑顔 今季ラストゲームで「何のためにバレーをしているのか、考えた」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【敗戦の翌日、完全に気持ちを切り替えていた】

 5月17日、サンバーズは準決勝でカタールのアル・ラーヤンと対決し、セットカウント2-3と、フルセットの末に敗れている。これで上位2チームに与えられる世界クラブ選手権出場という目標を逃した。細かいミスが出て、戦いが不安定になっていた......。

 今シーズンやり遂げたことを考えれば、天皇杯優勝、SVリーグ初代王者で満腹になっていても無理はない。責められはしないだろう。しかし、髙橋の悔しがり方は飛び抜けていた。チームメイトたちが心配し、次々に声をかけたほどだ。

「この悔しさを次につなげられるように......」

 試合後、マイクの前に立った髙橋の声は震えていた。涙をこらえるため、格闘していたのか。彼の負けず嫌いは、凡人のレベルではない。体内に飼っている巨大な感情の怪物を、強力な理性で封じる。彼の正体は、その陰と陽、どちらも強い点にあるのかもしれない。

 その証拠に、次の日の試合で完全に気持ちを切り替えていた。

 5月18日、3位決定戦ではイランのフーラード・シールジャーン・イラニアンと対戦し、セットカウント3-0で勝利を収めている。心身ともに難しい試合だった。すでに世界クラブ出場権への道を絶たれ、疲労も積もっていた。

 だが、髙橋はすでに負けを糧にしたように、勝負心を燃やした。力むわけではない。むしろ解き放たれたようだった。トリッキーな技のオンパレードで、バレーボールを楽しんでいた。相手のエース、フランス代表イアルバン・ヌガペトも顔負けの背面ショット、左手打ち、フェイントなどを繰り出した。サーブもショートサーブ、ストロングサーブを打ち分け、崩すだけでなく、エースを取った。

 ACLの3試合で、どんな状況であっても、彼はコートに立つ限り、戦う準備を整えられることを証明した。

「メンタルの難しさはあって、(3位決定戦は)気持ちがダウンしていたところはありました」

 髙橋は正直にそう明かしている。

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