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【SVリーグ男子】髙橋藍が振り返る優勝までの道筋 「ギアが上がるのを感じました」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【戦いのなかで強さを増した】

 その点、髙橋は天才的と言える。なぜなら、相手が怯んだ瞬間、もしくは混乱した隙を決して見逃さないからだ。

 決勝の2試合目、第1セットで象徴的なシーンがあった。サンバーズは、14-15とリードを許していた。第1戦から会場が変わった影響か、自慢のサーブでミスを連発。そのなかで、STINGSの関田誠大がレシーブでベンチサイドに突っ込み、足を痛めるアクシデントがあった。STINGS陣営に「関さん、大丈夫か?」と、わずかながら確実に動揺が走る。

 そこで髙橋は渾身のサーブで襲い掛かり、見事にエースを獲得した。さらに連続でブレイク、逆転に成功する。結局、デュースに持ち込まれることになったが、最後もやはり彼のスパイクが敵ブロックに吸い込まれ、29-27で競り勝った。いつ仕掛け、畳みかけるべきか、そこを知り尽くしているのだ。

「相手が出血したら、その傷口を探して抉れ。そして息の根を止めるまでやめるな」

 欧米のボールスポーツでは、そんな格言がある。髙橋はそれを実行できる。

「ショートサーブをあれだけうまく打てるのは、(SVリーグで)藍くらい。おかげでほかの選手も生きてくるのですが......あそこで(エースを)取ってくれるのは心強いですね。向こうもアクシデントがあって、難しいところ。勝負を分けたプレーかもしれません。」

 決勝で同じコートに立ったミドルブロッカー、佐藤謙次の証言だ。

 今シーズンを通じ、髙橋は戦いを重ねるなかで強さを増してきた。それは漫画のヒーローの感覚に近い。強敵との対決で磨かれ、実力を底上げ。足首の痛みとも向き合いながら、最大出力を出した。その積み重ねが優勝の栄光だった。

「(パリ五輪後に合流した)チーム作りの段階で、開幕戦はブルテオンに3-0で敗れました。よくないスタートをきったと思います」

 髙橋はそう振り返りながら、優勝した理由をこう続けている。

「長いシーズン、自分たちのバレーを信じてひとつずつ組み立ててきました。(五輪の疲労や足首のケガなど)コンディションを整えながら、(セッターの)大宅(真樹)さんとのコンビを確認し、レセプションでリベロとの関係性を高めてきました。天皇杯優勝という結果で、手ごたえを感じられたのは大きかったです。そこを節目に、レギュラーシーズン2位以上がかかった試合(ブルテオン戦)で結果(連勝)を出し、(チャンピオンシップ)セミファイナルでもギアが上がるのを感じました。取るべきところ、勝たないといけないところで自分たちのパフォーマンスを出せたと思います」

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