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石川祐希のペルージャが無敗で首位独走中 「バレーボールの首都」はこうして生まれた

  • ダヴィデ・ロマーニ●文 text by Davide Romani(『ガゼッタ・デロ・スポルト』)
  • 利根川晶子●訳 translation by Tonegawa Akiko

ペルージャの物語(後編)

 バレーボールにひと目惚れした野心的な会長、どんな挑戦やプロジェクトも支えることのできるスポンサー、そして敗北や失敗のあとでも自らを奮い立たせ、立ち直る強さを持つクラブ......。これらを混ぜ合わせ、しっかりシェイクしてグラスに注げば、シル・サフェーティ・ペルージャという強くて美味なカクテルが出来上がる。現在のバレーボール界、最強のチームのひとつだ。

 すべては2001年、ジーノ・シルチがチームを創設したことから始まった。彼は一代で作業用の安全服やヘルメットなどを扱う会社「シル・セーフティー・システム」を興した起業家だ。息子がバレーボールを始めたことからこのスポーツに興味を持つようになり、初めは熱心な保護者となり、次にチームのスポンサーとなり、ついには自分のチームを作ってしまった。チーム創立にあたって彼が掲げた理念は、彼が経営する会社のものとまったく同じだった。

「共通の目標と粘り強ささえあれば、不可能な目標にもたどりつける」

 その言葉通り、セリエCから歩みを始めたチームは、2012年にはイタリアのトップリーグであるスーペルレーガに昇格。2017年以降は数多のタイトル勝ち取り、ペルージャは10年あまりでイタリアバレーボールの首都となった。

現在リーグ戦12連勝で首位を走るペルージャの石川祐希 photo by Abaca/AFLO現在リーグ戦12連勝で首位を走るペルージャの石川祐希 photo by Abaca/AFLOこの記事に関連する写真を見る ちなみにサッカーの強豪は大都市に集中しているが、バレーボールの場合は地方の小都市が多い。ペルージャだけではなく、現在リーグ2位のトレントは北イタリアの人口12万の山合の町、3位のルーベにいたっては人口9000人のトレイアという町に本拠地を置く。

 サッカーは今やスポーツというよりはすでに巨大な国際ビジネスで、大都市圏の巨万の富がチームに注がれる。地方都市はとても太刀打ちできないが、バレーボールはまだそれほどではないのだ。そしてそれがバレーボールの魅力でもある。シルチも過去に「なぜサッカーではなくバレーなのか」と聞かれ、こう答えている。

「バレーボールはサッカーのように多くの金が絡まないので、プレッシャーも少なく暴力沙汰もない。まだ純粋にスポーツとして楽しめる」

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