パリオリンピック男子バレー 日本は「史上最強」を証明もイタリアに惜敗 「最後の1点」で勝負を分けたのは何か (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 イタリアには総じて球技に"守備の文化"がある。守ることに耐性があるのだが、それは我慢強さとは違う。

〈攻めてみろ、痛い目に合わせてやる。自分たちの苦しみは快感に変わる〉

 イタリア人は、そうしたマゾヒスティックに近い攻撃姿勢を保てるのだ。この日、息も絶え絶えになりながら、彼らは信じて戦い方を変えなかった。サーブで積極的な姿勢を貫き、実らせたのは象徴的だった。セットカウント1-2としたあとは、さらに攻めのサーブで優位に立つ。大会屈指のブロックが当たりだし、4セット目は5本のブロック成功だ(日本は西田の1本のみ)。

「ジャネッリがサービスエース。AEDで心臓を動かした!」

 イタリア大手スポーツ紙『ガゼッタ・デロ・スポルト』は、独特の表現をしている。イタリアは日本のわずかな出血に興奮したかのように、そのまま勢いに乗って攻め立て、日本の息の根を止めた。

 日本は5セットを通じ、「バレー」の楽しさを感じさせるプレーをしていた。『ガゼッタ』紙が「今大会のベストリベロ」と高く評価した山本智大を中心に、ディグやブロックフォローなどのディフェンスで持ち味を出し、オポジットの西田も、両チーム最多3本のサービスエースで攻撃を引っ張った。日本男子バレーの歴史に残る一戦で、史上最強であることをあらためて証明した。

 それだけに、惜しかった。

「世界を相手にして、今日は結果を残せなかったです。でも、みんなともに歩んできて、ステップアップしてきたチームだと思います。ネーションズリーグでメダルを獲ったり、今日も非常に強いイタリアと互角に戦って、あと一歩まで......」

 石川は言った。偉大なる凱歌をあげる、その前夜だ。

【スポルティーバ バレーボール男子日本代表特集号】

7月17日発売 ご注文はこちら>>

パリオリンピックでのメダル獲得の期待がふくらむバレーボール男子日本代表。
石川祐希、高橋藍らを筆頭に、絶大な人気を誇る日本代表チームを特集。
代表選手全員の撮りおろしとインタビューのほか、ネーションズリーグの最新プレー写真も掲載。

特典付録は『ハイキュー!!』特製カレンダーと古舘春一先生による描きおろしオリジナルイラストのクリアファイル。
カレンダーのイラストは大ヒット中の『ハイキュー!!ショーセツバン!!』(JUMP j BOOKS)の全面オビのデザインを使用。

※内容は変更になる可能性もございます。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

フォトギャラリーを見る

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る