パリオリンピック男子バレー 日本は「史上最強」を証明もイタリアに惜敗 「最後の1点」で勝負を分けたのは何か (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 イタリアには総じて球技に"守備の文化"がある。守ることに耐性があるのだが、それは我慢強さとは違う。

〈攻めてみろ、痛い目に合わせてやる。自分たちの苦しみは快感に変わる〉

 イタリア人は、そうしたマゾヒスティックに近い攻撃姿勢を保てるのだ。この日、息も絶え絶えになりながら、彼らは信じて戦い方を変えなかった。サーブで積極的な姿勢を貫き、実らせたのは象徴的だった。セットカウント1-2としたあとは、さらに攻めのサーブで優位に立つ。大会屈指のブロックが当たりだし、4セット目は5本のブロック成功だ(日本は西田の1本のみ)。

「ジャネッリがサービスエース。AEDで心臓を動かした!」

 イタリア大手スポーツ紙『ガゼッタ・デロ・スポルト』は、独特の表現をしている。イタリアは日本のわずかな出血に興奮したかのように、そのまま勢いに乗って攻め立て、日本の息の根を止めた。

 日本は5セットを通じ、「バレー」の楽しさを感じさせるプレーをしていた。『ガゼッタ』紙が「今大会のベストリベロ」と高く評価した山本智大を中心に、ディグやブロックフォローなどのディフェンスで持ち味を出し、オポジットの西田も、両チーム最多3本のサービスエースで攻撃を引っ張った。日本男子バレーの歴史に残る一戦で、史上最強であることをあらためて証明した。

 それだけに、惜しかった。

「世界を相手にして、今日は結果を残せなかったです。でも、みんなともに歩んできて、ステップアップしてきたチームだと思います。ネーションズリーグでメダルを獲ったり、今日も非常に強いイタリアと互角に戦って、あと一歩まで......」

 石川は言った。偉大なる凱歌をあげる、その前夜だ。

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プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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