パリオリンピック男子バレー 日本は「史上最強」を証明もイタリアに惜敗 「最後の1点」で勝負を分けたのは何か (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【「1点を取りきる力」】

 筆者はたまらず、セッターである関田誠大に聞いた。

――分岐点があるとすれば、3セット目、24-21のところだったと思いますが?

 関田は今大会、アルゼンチンの主将が激賞するほどのプレーで、そのトスは変幻自在だった。この日も、崩れた体勢からでもスパイクをお膳立てしていた。

「まあ、どうなんですかね。相手のサーブもあったし、そんな簡単にいくものではない、と思っていました。自分たちにチャンスがあったのは事実だし、そこを掴み取れなかったのは甘いところだなって」

 簡潔だったが、ひとつのヒントだった。

 この日のイタリアは、序盤からサーブミスの失点が多かったと言える。1セット目は6本のサーブミス。3セット目も4本のサーブミスがあった。しかし、彼らは構わず、ぎりぎりまで際どいサーブを打ち続け、ディフェンスからのオフェンスに定評のある日本を崩そうとしていた。一か八か、ではないが、サーブに強気で攻める気配が漂った。日本がハイレベルのディグを見せるなか、虎視眈々と流れが変わるのを狙っていた。

「(敗因は)最後の1点を取りきる、ってところだったかなって自分は思っています」

 髙橋藍は言ったが、芯を食っていた。イタリアを舞台にタイトルを争ってきただけはある。

「3セット目は点差があって、取りきれなかった。そこが一番だと思います。誰のせいとかじゃなくて、"チーム全体がいける"って感じたと思うから、隙ができてしまったところもあって。ラスト1点をしっかり勝ちにいく力が足りなかったと思います」

 ラテン語圏には、勝負の鉄則がある。

「敵が血を流したら、傷口を抉(えぐ)り続け、死ぬまでやめるな」

 日本は"掟"を破り、慈悲を与えてしまった。日本の牙と爪は、死に体だったイタリアから離れていた。

 イタリアは、シモーネ・ジャネッリが強烈なサービスエースを決めた。24-24に追いつきデュースになった。今まで失敗してきたサーブを、正念場で成功させてきた。

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