パリオリンピックバレー男子ドイツ戦 冷静に敗因を語る髙橋藍は「勝ち筋」を見つけていた (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【勝利に届かなかった理由は?】

 髙橋はおくびにも出さなかったが、ケガをした足首は万全だったわけではない。パリに入ってからの会場練習でも痛みは出たという。

「100%ではないですけど、100%にもっていくしかない、と思っています。モチベーションで持っていく。最後は痛みがあっても、オリンピックにかけている気持ちで戦いたいです」

 前々日の練習後の取材、髙橋がそう洩らしていたが、ドイツ戦でも影響はあっただろう。ただ、ほとんど生来的な負けず嫌いは、事実を正面から受け止めていた。勝者はすべてを乗り越えるべきものなのだ。

 第2セット、第3セットと取り返し、実は日本は流れを引き寄せていた。入りは悪かったが、巻き返しに成功していたのである。そして迎えた4セット目、接戦を28-30で落とした場面にこそ、試合の分岐点はあったかもしれない。

――2、3セットと巻き返しながら、最後は勝利に届かなかった理由とは?

 筆者がそう訊ねると、髙橋は目を合わせて答えている。

「一番キーになったのは、やっぱり4セット目かなと思います。終盤、あそこを取るか取らないか、勝敗を決めたかなと。相手がミスを出した時、自分たちもミスを出してしまった。ネットタッチであったり、自分自身もアンテナタッチしてしまって。力が入り、点を取りに急いでいたと思います。気持ちを上げていくのも大事ですけど、冷静になれるかも大事だなと、今日は戦って思いました」

 微かな重みで傾く天秤の上にこそ、王者の勝ち筋はあるはずだった。今の日本には、戦いのなかで相手や状況を乗り越えられる適応力がある。ジャイアントキリングを狙い、全力を投じてきたドイツを相手に、1セット目こそ落としたものの、勝ちきれるだけの挽回を見せていた。しかし常勝チームらしくもない、勝ち急ぎがあって流れを逃したのだ。

「力が入って、無理にブロックを抜きにいっているシーンが多かったです。それで相手のブロックを食らっていました。リバウンド、ブロックアウトで、ミスにしないのも重要で......。日本はディフェンス力が高いだけに、たとえ1本が決まらなくても、もう一度ディフェンスをして切り返していくことを意識すべきでした」

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