中垣内祐一・東京五輪バレー男子監督の功績 日本代表が急速に力をつけた要因を聞く (2ページ目)

  • 楊順行●文 text by Yo Nobuyuki

 それはそれとして......日本代表は、中垣内・ブラン体制で着実に力をつけていく。19年のワールドカップ(W杯)では、中垣内さんが現役だった91年以来の4位。先述のごとく、21年の東京五輪も92年以来の好成績だった。五輪後のワールドネーションズリーグ(VNL)も、22年は5位と過去最高の成績を残し、今年は初めての銅メダルへと躍進する。

 そして──10月中旬まで行なわれていたW杯(パリ・オリンピック予選)では、5勝2敗でプールBの2位に入り、パリ五輪出場権をつかんだ。地元開催の東京を除けば、予選を突破してのオリンピック出場は実に4大会ぶりだ。W杯期間中には、世界ランキングを過去最高の4位まで上げている。

【日本男子バレー躍進の理由】

 日本の世界ランキングは、10年代後半は15位前後だった。それが中垣内監督以後、19年のW杯の好成績で20年には10位に。今年初めには7位になっており、さらに4位まで上げたから、日本は急速に力をつけてきたといえる。

「それにしても......オリンピックに出ることに必死だった我々の時代には、世界4位なんて考えられなかったですよ。ランキングはアテにならない、という人もいますが、今回のパリ予選は世界3カ所で行なわれ、各プールの上位2カ国しか権利を得られません。つまり日本は、上位6カ国のひとつに入っているわけで、世界トップクラスであることは間違いないでしょう」

 その功績は、決して身長が高いとはいえない選手でも積極的に登用したことだ。これまでの日本には、世界に伍していくには大きな選手がポイント、という信仰があったように思う。サーブで崩して得点するためには、なによりブロックが大きなカギを握るからだ。それにはミドルブロッカー(MB)だけではなく、アウトサイドヒッター(OH)にも、できるだけ身長の高い選手を揃えたい。

 だが、ブロックを抜けてきたスパイクをレシーブ(ディグ)し、攻撃につなげるのも、もうひとつの大きな得点パターン。ディグから攻撃につなげることをトランジションというが、「身長ではやや劣っても、運動能力やボール扱いにすぐれ、ディグの能力の高い選手を重視した」のだ。

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