中垣内祐一が語る外国人監督が結果を残す理由「日本の指導は良くも悪くもガラパゴス化」

  • 楊順行●文 text by Yo Nobuyuki

中垣内祐一インタビュー(後編)

前編:日本代表が急速に力をつけた要因を聞くはこちら>>

 近年の日本のスポーツ界は、外国人を代表監督に登用した競技が顕著な結果を残している。ラグビーしかり、バスケットボール、バドミントン、そしてバレーボールもまたそうだ。なぜ、必ずしも文化やメンタリティーが同じではない外国人監督が、好成績を残すことができるのか。その理由を東京五輪で日本男子バレーボールの指揮を執った中垣内祐一さんに聞いた。

2021年の東京五輪で日本男子バレーボールの指揮を執った中垣内祐一氏 photo by JMPA2021年の東京五輪で日本男子バレーボールの指揮を執った中垣内祐一氏 photo by JMPAこの記事に関連する写真を見る

【日本指導のガラパゴス化】

「海外研修に行き、多くの指導者と出会うなかで感じたのは、日本の指導は良くも悪くもガラパゴス化しているということでした。特有の進化しかしない。バレーに限らず、日本のスポーツは大学、あるいは企業を中心に発展してきました。ですが同一企業での経験しかないと、常に同じ環境、スタッフ、風土のなかで強化していくので、新しい意見や考え方が入ってきにくい。ですから、企業の監督から代表監督になったとしても、視野の広さも含め、自分の経験に限定されがちです。また"あのチームから代表を選ばないわけにはいかない"という、企業チーム特有のしがらみもある。

 だけど外国人の指導者は、常に『負けたらクビ』の状態です。日本の指導者が足の届くプールで安心に泳いでいるとしたら、彼らは海の真ん中にいるようなもので、必死で泳がなくてはいけませんから、勝つためにいいと判断すれば即座に採り入れるし、情報は常にアップデートし、選手やスタッフもどんどん代える。もちろん、特定の企業に対する忖度など入り込みません。そして選手もそういう環境で育ちますから、自分が指導者になった時はこうしよう、ああしようと自分のバレー像を描いていき、何世代も続きます。それが技術的、戦術的なハイブリッドにつながっていく」

 だから自分がチームを率いるにあたり、外国人コーチの手腕を導入することになんの躊躇もなかった。

 そこで招いたのが、かつてフランス代表を率いた経験のあるブラン氏だ。最初はぶつかることも多かったというが、聞くところによるとむしろ、「東京オリンピックまでは自分が名目上監督となるが、それ以後はブラン氏に」と最初から決めていたという。そして、そのブラン監督率いる日本代表が、パリ・オリンピックへの出場を決めた。奇しくもチームは、指揮官の母国へ乗り込む、というわけだ。

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