石川祐希が振り返る完全アウェーでのイラン戦の圧勝 男子バレー日本代表の成長を実感 (3ページ目)

  • 柄谷雅紀●取材・文 text by karaya masaki
  • 立松尚積●撮影 photo by Tatematsu Naozumi

――会場ではブブゼラ (南アフリカ共和国の民族楽器。チア・ホーンの一種)も鳴り響いていました。独特な雰囲気でイランと対戦し3-0で勝ちました。

「あまり経験がない会場の雰囲気でした。歓声もブブゼラの音もすごくて、イラン戦の第1セットはコート上で選手同士の声がまったく聞こえない状況だったんです。自分たちが点を取っても、点を取っている感じがしませんでした。逆にイランが点を取ったら流れに乗ってくるという難しさがありました。

 それに加えて、普段は相手がハイセットなどになった場合、ブロックに跳ぶか跳ばないかはリベロが判断して指示を出します。でも、声が聞こえないのでそれもできない状況でした。なので、前の選手の動きを見て後ろの選手が判断するというシステムに変更して対応しました。

 第1セットを取ったことで、第2セットからは歓声もブブゼラの音も少し小さくなったのでいつもどおりできました。イランは乗せてしまうとどんどん勢いに乗ってくるチームなので、第1セットを取れたことがよかったです。最後の第3セットでは、イランへのブーイングのほうが大きくなっていました。それは日本がしっかりとしたバレーをできていたからこそ。一歩間違えれば相手に流れを持っていかれる試合だったので、3-0で勝てたことは大きいと思います」

――アウェーでイランに完勝したことは今後にもつながりそうですね。

「イランに勝つことが難しかった時代も僕は過ごしています。だからこそ、自分たちが『成長している』『強くなっている』と感じます。アジアのライバルとしてイランはずっと意識しなければいけません。その相手に僕たちの強さを証明できたことは大きいです。

 VNLでも勝ちましたが、アジア選手権では終始リードしてゲームを進められたので、日本がイランよりも上の位置にいると示せたと思います。これから、イランの選手たちは、日本と試合をする時はネガティブな気持ちになると思います。パリ五輪、その後のロサンゼルス五輪を見据えても、イランに対して日本は強いというイメージを与えられたことには意味があります」

――アジア選手権後、少しのオフを挟んで沖縄、ナショナルトレーニングセンターでの合宿を経てパリ五輪予選を迎えることになります。

「沖縄では追い込んだ練習ができる期間なので、しっかり追い込んで個人のスキルを高めます。その後、チームとしてしっかり仕上げていきたい。個人的にはブロックとレセプションをしっかり練習し、サーブももっと安定させていきたいと思っています」

(vol.8:五輪予選で証明したい強さ「何かを変えるきっかけを作れる自信はある」>>)

【プロフィール】

◆石川祐希(いしかわ・ゆうき)

1995年12月11日生まれ、愛知県出身。イタリア・セリエAのミラノ所属。星城高校時代に2年連続で三冠(インターハイ・国体・春高バレー)を達成。2014年、中央大学1年時に日本代表に選出され、同年9月に代表デビューを飾った。大学在学中から短期派遣でセリエAでもプレーし、卒業後の2018-2019シーズンからプロ選手として同リーグで活躍。2021年には日本代表のキャプテンとして東京五輪に出場。29年ぶりの決勝トーナメント出場を果たした。

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