【女子バレー】木村沙織、『アタックNo.1』とグラチャンを語る (2ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • photo by AFLO

 慌てたのは眞鍋監督だ。「キャプテンに任命しにトルコまで行ったのに、引き受けてくれないどころか、現役まで辞めるって言うんですからね」(眞鍋監督)

 実は監督自身も続投をオファーされ、1ヵ月半くらい悩んだという。だがロンドンで金メダルをとれなかった悔しさがあって、引き受けることにした。だからトルコからの帰国後も諦めず、木村に「このまま世界一になれないのは悔しいだろう?」とメールでのやりとりを続けた。「誰もが挑戦できることではないし、やるからには世界一を目指してやろうよ」と。

 眞鍋監督と同様、1ヵ月半ほど悩んだ木村は、結局、現役続行とキャプテン就任を引き受けた。これまで一度もキャプテンを経験したことがなかったのも、「やってみようか」と思った理由の一つ。「こんな私をキャプテンに任命するということは、『私らしく自然体でいい』ということだと思っています」とマイペースだ。

 ワールドグランプリでの木村は、予選こそスタメンから外れることもあったが、ファイナルラウンドの5連戦では全戦スタメン。ベンチに戻ることなく戦い続けた。「セッターを育てるのはアタッカー」という言葉がある。国際大会が初めての司令塔、宮下の成長には、経験のあるアタッカーが必要だった。木村をはじめ、新鍋理沙、江畑幸子ら銅メダリストがサイドスパイカー陣を固め、新チームを盛り立てた。

 4位というのは、実は過去最高タイの成績である。木村は「キャプテンとして引っ張れたかというと、プレイでも、コートの外の行動でもまだまだです。でも、若い選手がたくさん入ってきて、日に日にチームの雰囲気もよくなっていきました。だから悲観はしていません」と振り返った。

「初めてのキャプテン経験ですが、どなたか先輩にこんなアドバイスをもらいたいといった希望はありませんか?」と尋ねると、しばらく考え込んでから、「考えたこともありませんでした......」と目を見開いた。

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