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錦織圭の最も突出した才能は「頭脳」 世界1位になった11人の選手を見てきた名コーチは即答した (3ページ目)

  • 内田 暁●取材・文 text by Akatsuki Uchida

 何も知らずに洞窟に入ったケイは、あんぐりと口を開け、目を輝かせながら教会を見渡していました。岩塩の洞窟内に巨大な十字架があり、本当に美しい光景なんです。

 私とケイは遠征に行くたびに、必ず町や観光地も見るようにしていました。実はそれは、盛田(正明)氏の願いでもあったのです。盛田氏から『ケイにはいろんな世界を見せてあげてほしい。ホテルと試合会場を往復するだけの選手にはなってほしくない』と言われていました。

 盛田氏は、ケイにはテニスだけでなく、訪れた国のことなども英語で話せるようになってほしいと願っていた。そうすることで、日本を世界にプレゼンできる存在にもなってほしいと思っていたのです。それだけのスターになれると、盛田氏は信じていたのだと思います」

 聡明さに加え、テニスと外の世界をつなぐ知識や対話力も備えた錦織には、指導者になることを望む声も多い。

 ハラミロ氏は、錦織の未来に何を見るだろうか?

「ケイには間違いなく、すばらしいコーチになる資質があります」と、ハラミロ氏は明言する。

「ただコーチは、選手時代とはまったく別の考え方やテニスへのアプローチが求められる立場です。果たして、ケイがコーチをやりたいのか? それはわかりません。もしかしたら、テレビコメンテーターのような仕事が向いているのかもしれません。すべては彼次第です。

 ただ、確信を持って言えるのは、やがて必ず『テニスが恋しくなる』ということです。引退した選手は誰しも、最初のうちは『もうテニスは十分だ』と感じるでしょう。でも1年もすると、戻ってきたくなるものです。指導者なのか、解説者なのか......それはわかりませんが、いずれにしてもケイは必ず、テニス界に戻ってくるでしょう」

 ハラミロ氏も出席していたセレモニーの最後、錦織は1万人のファンに「ちょっと休ませてください。必ず、戻ってきて何かはします」と約束した。

 何が自分に向いているのか、何が最適な道なのか──?

 その命題への解も必ず、いずれ彼は自分で見つけるだろう。聡明さこそが、錦織圭の最も突出した才覚なのだから。

(つづく)

◆伊達公子の視点(1)>>


【profile】
ゲイブ・ハラミロ
コロンビア・カリ出身のテニスコーチ。ニック・ボロテリーの右腕として約30年間活動し、1985年から2009年までIMGボロテリー・テニスアカデミーのテニスディレクターを務めた。アンドレ・アガシ、ジム・クーリエ、ピート・サンプラス、モニカ・セレシュ、マリア・シャラポワ、錦織圭ら、数多くの世界トップ選手の育成に携わった。四大大会すべてでコーチを務めた経験を持ち、32カ国で選手・指導者らを対象としたクリニックを展開。現在は米フロリダ州のRPS AcademiesでCEOを務め、選手育成や指導者教育に取り組んでいる。

著者プロフィール

  • 内田 暁

    内田 暁 (うちだ・あかつき)

    編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。

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