錦織圭の調子は「右肩上がり」4年ぶりの全豪OPは「誰とやっても簡単に負ける感覚はない」 (3ページ目)
【全豪OPでは1〜2回戦を突破したい】
そのいい感覚を保ち、描く「右肩上がり」のカーブの先で、錦織は4年ぶりの全豪オープンを迎える。果たして今の錦織は、「完全復活」に到達したと感じているのか? その問いには、彼は幾分、首をかしげる。
「かなりよくなってきたし、8割くらいは来ているんですが、まだ試合のなかで自信が持てず、ちょっと下がってしまったり。そこらへんをなくしたいのと、(現74位の)ランキングをもっともっと上げていければ......、50位、30位と入っていければ、また違った世界が見え、メンタル的にも強気に行けるんじゃないかなと感じています」
その「違った世界」を眺望できる高みに至るには、今大会は絶好の足がかりだろう。
昨年の12月の時点で錦織は、「まだ、グランドスラムのベスト8を目標にすると言えるほどの自信はない」と言っていた。
では、香港でツアー決勝に進んだ今なら、その思いは変わっただろうか──?
「いや、まだそこまではないですかねぇ。ほんと、1試合ずつ。確実に序盤でシードに当たるし、まだまだチャレンジャーの気分ではあるので。この間の(香港オープン)決勝では、急に、自分が勝たないといけないみたいな雰囲気が自分のなかで出てしまった。そういうところも反省点ではあります。ランキング的にも全然、まだまだリラックスしてできる地位にはいるので」
錦織の「まだ自信がない」発言には、おそらくは、言葉にすることで自身への過度な期待を払い、"無欲の特権"を活用する狙いもあるのだろう。
だからこそ、彼は言う。
「ドロー運もありますし、3セットで戦い終えることなども関わってくる。でもプレー自体はいいので、誰とやっても簡単に負ける感覚はないし、そこは半年前とは全然違う。1〜2回戦を突破したいなという気持ちではいます」
自分への期待感と、それを沈めるかのような謙虚さ──。ケガと戦っていた頃とはまったく異なる「葛藤」を抱え、2025年最初のグランドスラムへと向かう。
著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。
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