錦織圭が初めて語ったイップスとの戦い「大事なポイントが取れない。なぜかすぐミスする」 (3ページ目)
【車いすは体の使い方がまったく違う】
スライスにしても、ドロップショットにしても、錦織は「練習でできないことは、試合でできない。子どものうちから練習していないと、どんどんできなくなってしまう」とも言う。
皆から「天才肌」と呼ばれ、プレーする姿はボールと戯れているかのよう......ともすると、泥臭さとは無縁のようにも見える錦織だが、「僕はコツコツとやるのは好き。努力って言葉、好きですよ」と気恥ずかしそうに笑った。
今回の合宿が趣(おもむき)深いのは、錦織が車いすテニスのジュニア選手の指導も行なったことだ。
全日本ジュニア車いす部門優勝者の橘龍平は、「走りながらのフォアのダウンザライン(ストレート)が入らない」と相談した時に錦織に言われた、「コートではなく、ネットポールの上あたりを狙うといいよ」との助言が心に残ったと言った。
実はこの助言は、錦織がイップスに陥った時に、スポーツ心理学者から受けたアドバイスでもあったようだ。
「3年くらい前......ケガをしたあとくらいに、イップスみたいな感じになったことがあって。大事なポイントが取れない。本当にブレークポイントの時だけ、なぜかすぐミスする。
それで、ちょっと先生に相談した時に言われたのが、まずは『リスクを取らない』こと。硬くなっている時に『ウリャー』とダウンザライン狙っても、入る可能性がまずないので。
あとは、『ネットの上のほうをまず狙おう』ということ。どうやって打とうかな、とかいうより、狙う場所を相手コートのベースラインとかではなく、目印になる一番近いところを狙う。『コートに入れたい』ではなく、頭の意識を違うとこに持っていくこと」
そのような自身の経験も、錦織はジュニアたちに語り聞かせていた。
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── 今回の車いすテニスの指導で、一般との共通点や、逆に違いなど感じましたか?
「意外と同じところもありましたけど、やっぱり体の使い方がまったく違うので、車いすの難しさは肌で感じましたね。特にふだんは(国枝)慎吾さんとかを見ているので簡単に打っているように見えますけど、すごく難しいことをやっているんだなっていうのを、ジュニアに教えて認識した。
もちろん今回も、慎吾さんがとなりにいなかったら、まったくコーチングできなかった。でも、相談しながら指導するのは、楽しかったです」
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