大坂なおみ、世界ランク831位からどう上がっていく? 元世界1位ナブラチロワの見立ては (3ページ目)
【新たなキャリアを再びスタート地点から歩み始める】
大坂自身もおそらくは、周囲の目にもまして自分に厳しい評価を下している。
「ロッドレーバーアリーナに戻ってきて、ファンの思いを感じながらプレーするのは、とても楽しかった」
試合後の会見の冒頭ではそう口にするも、言葉とは裏腹に、表情には落胆の陰が落ちる。
今の率直な気持ちは──?
会見終盤のその問いに、大坂は「今もまだ、がっかりしている」と正直に打ち明けた。
「それが自分への落胆なのか、どうなのか。もっといいプレーができたはずだと感じている。緊張もしていたし......」
そこまで言うと、ネガティブな感情を振り払うように「でも、前を向かなきゃ」と自分に言い聞かせた。
それでもまだ、あふれる思いは唇からこぼれる。
「試合を重ねれば、よくなっていくと思う。今は正直、すごくハッピーというわけにはいかないけれど、この経験から学んでいくしかないし......」
視線を落とし、言葉を紡ぎながらも「やめやめ! もう黙りましょ」と笑みを作った。
完璧主義者ゆえに自分に厳しく、同時に、敗戦からもプラス要因を持ち返るべく自分を鼓舞する。そのどこか不器用で正直な姿にも、ノスタルジーが漂った。
産休による救済措置はあるものの、現在の大坂のランキングは831位。プロ転向から10年以上の年月を経て、今の彼女は再び、新たなキャリアをスタート地点から歩み始めているかのようだ。
その先に彼女が辿り着くのは、どこなのか?
大坂のコーチ、ウィム・フィセッテは言う。
「彼女のキャリアベストは、この先にある。結果的にどうなるかはわからない。ただ間違いなく、以前よりもいい選手になれる道を歩んでいる」......と。
著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。
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